奈良時代(733年)に、日本で最初の大僧正(最高位)となった行基によって開創されたと伝わる大善寺。本堂には薬師三尊像を安置していることから薬師堂とも呼ばれ国宝である。築720年以上が経過し、関東周辺では最も古い建物となる。また、池泉鑑賞式蓬莱庭園は江戸時代初期の作品である。
山畔を活かした地形に、東西に流れる池を配した池泉鑑賞式蓬莱庭園。蓬莱庭園なので、長寿の象徴である鶴や亀をモチーフにした鶴石島/亀石組や鶴島/亀島が見つかるはずである。
大善寺庭園を図解してみる。亀石組と鶴石組が向かい合い、鶴石組の左手(西部)には三尊石(阿弥陀三尊)がみられる。次に詳細を説明していこう。
まずは亀石組。江戸初期の特徴として、中島を造らず松の木の下に出島形式の亀石組が流行しており、その形式を残すものである。写真の▲マークが亀頭石であろうか。
右にある立石付近が亀に向かって羽を広げた鶴石組である。抽象的な表現であり書院で流れる音声解説を聞かないと理解できなかった。その奥には尖った立石とその両側の石により阿弥陀三尊を見立てている。三尊石の中心となる中尊石は、その存在感から本庭園における主石であり、また遠山石もかねていると思われる。
阿弥陀三尊石の下部には枯滝石組を形成している。
池泉中央部にも枯滝石組がみられ、また池中立石による岩島が配されている。このように大善寺庭園では立石が多様していることが最大の特徴である。
池泉東部には滝石組があり、現在唯一の水源となっている。滝の両側にある添石には巨石が使われている。
書院から池泉庭園を眺める。ここは2016年にTV放送された新垣結衣と星野源が出演する「逃げるは恥だが役に立つ(逃げ恥)」のロケ地でもあり「逃げ恥詣で」と呼ばれる観光客も増えたとのこと。
書院向かいには中庭風の庭園が造られ、小さな枯山水に舟石が置かれているところに興味をもった。
庭園観賞を終えて、階段を登って本堂(薬師堂)へ向かう。これが築720年を越える関東周辺でもっとも古い建築といわれる国宝だ。その近くには展望広場もあり、
このような残雪が美しい見事な光景が広がる。
○ | よく考えられた地割と、池中立石、鶴石組、三尊石により奥行き感を生み出している。また、音声解説により庭園を正確に理解できるのも嬉しい。 |
× | 庭園を正面から眺めるためには、書院の向かいにある廊下から観賞する必要があるが、少し入りにくい雰囲気である。 |