廣澤美術館は、茨城県を代表する企業グループ・広沢グループが運営するザ・ヒロサワ・シティにある美術館で、横山大観などの美術品2500点を収蔵。隈研吾によって設計され、令和3年(2021)に開園。庭園は重森三玲に従事した齋藤忠一(ちゅういち)らによって作庭された。
令和3年に隈研吾によって設計された廣澤美術館。庭園好きには、廣澤美術館のメインは本庭園といっても過言ではないだろう。なお美術館に付随する巨大な庭園では、島根県の足立美術館が海外からも高い評価を受けている。
美術館を取り囲むように3つの庭が作庭され、まずはメインとなる「浄(きよら)の庭」から。滝石組があり、唯一水が流れるポイントである。低めの滝石組で何段にも落とされている。通常は滝石組の下部は池泉となるが、ここでは池泉としていない。
本庭園では滝石組があるが、基本は石庭であることから「枯山水」に分類。白砂式の枯池には縦横に飛石を敷いている。
石組に鶴や亀などの意匠はみられない。巨石を多様した枯山水は大味になりがちであるが、変化に富みつつ繊細さが感じとれる。飛石ひとつみても途中までは赤石を使い、その先は青系となっている。
立石、横石と変化を付けた石組で、重森三玲を思い出させるような石組だ。
公式サイトには「隈研吾氏設計 巨石で建築を消す試み」と記載されており、訪問前は意味が分からなかった。現地に訪れて初めて理解したが、建築物の周りを巨石で囲っているのである。それもただ石を積んでいるというものではなく、例えばこちらは渓谷のような意匠になっている。
先ほどの石組をテラスから眺める。洲浜も作らた美しい光景であり、新たな庭園の世界観を生み出していると感じた。
美術館とテラスを眺める。
続いて「炎(ほむら)の庭」を見学。筑波山の借景が美しく、こちらも美術館の外壁が巨石で囲われている。
巨石による石組とツツジ。
建築と石組が絶妙にマッチしているのは、さすがは隈研吾設計と感じ入るポイントだ。
最後は「寂(しじま)の庭」。ちなみに「浄の庭」、「炎の庭」、「寂の庭」を合わせて全体で「つくは野の庭」と呼び、本庭の命名は元号「令和」の考案者とされる中西進だ。
「寂の庭」の木製椅子に座って、手前に「寂の庭」、奥に「炎の庭」をみる。ツツジを炎に見立てているのだろうかと推測しながら、庭園をのんびりと眺める。
古庭園の要素はない近代庭園ではあるが、西の足立美術館、東の廣澤美術館と呼ばれる日が来るのではないかと思うほどの空間だった。都心からはややアクセスしにくい場所にあるが、足を伸ばす十分借りある庭園である。
○ | モダンな近代庭園を愉しめる。特にテラスの居心地は良く、直射日光が厳しくない時期に訪れれば、ずっと座っていたくなる。また敷地の広さに負けないよう巨石を使うが、空間の妙により大味になっていない繊細な石庭といえる。 |
× | 特に見当たらない。 |