安土桃山時代の武将・前田利家の夫人・松子(まつ、芳春院)が江戸初期(1608)に建立した臨済宗大徳寺派の塔頭寺院である。芳春院に隣接する敷地に、室町時代に創建された龍泉庵(りょうせんあん)があり、明治時代(1876)に芳春院に合併するが、その後荒廃して雑木林となっていた。この地を盆栽庭園として整備して2021年3月に開園。盆栽は銀座で盆栽展を営んでいた森前盛二氏によって管理されている。
明治時代に芳春院に合併した龍泉庵に2021年に盆栽庭園が作庭された。ちなみに芳春院には小堀遠州によって作庭された古庭園があるが一般公開されていない。
盆栽は本格的に庭園めぐりをはじめる前に大宮盆栽美術館を訪問した限りである。まず足を踏み入れて「枯山水と盆栽を組み合わせるとこうなるのか」と感心した。
小屋には沢山の盆栽冊子もあり、専門誌と本物の盆栽を比較しながら知識を付けることができるのが有り難い。ちなみに大宮盆栽美術館では、盆栽の知識が分かるようにパネルで紹介している。
盆栽は定期的に入れ替わり、今回一番心を奪われたのは樹齢約800年とされる真拍(シンパク)。幹が枯れて白骨化した舎利(シャリ)が美しすぎる。こちらは世界的な盆栽家と知られる木村正彦によるものだ。
こちらは樹齢200年の盆栽。
樹齢70年の蝦夷松。舎利(シャリ)が見事であり、こちらも木村正彦によるものだ。
木村正彦は埼玉で活動する盆栽家であり、さいたま市には「埼玉県さいたま市北区盆栽町」という地名も残っており埼玉と盆栽は深い関係にある。
枯山水でもあるため苔の野筋に巨石を据えている。
参道沿いには目を惹く石が並んでいる。凹凸が多い石であるため中国で好まれる太湖石(たいこせき)と思い伺ってみると、奥の石は中国の竜眼石(りゅうがんせき)。手前は京都の鞍馬石とのこと。
中国の竜眼石を撮影。盆栽石としてもよく使われる石とのこと。
鞍馬石といえば沓脱石などでよく使われる表面が平らな石というイメージがあるが、このような複雑な形状をしたものがあることを初めて知る。
盆栽庭園に隣接したところに純粋な枯山水も造られている。
最後に先ほどの竜眼石を石付けとした真拍(シンパク)を眺めて盆栽庭園を後にする。
○ | 盆栽文化を枯山水に融合させた他に例をみないユニークな庭園である。 |
× | すぐ近くに日本屈指の枯山水とされる大仙院があり、拝観料1,000円の盆栽庭園はやや足を運びにくい。盆栽の魅力を知ってもらうために拝観料がもう少しリーズナブルにして、京都で盆栽をもつ人を増やすことができると素晴らしい感じた。 |