室町末期となる戦国時代に、伊勢国司(こくし)であり大名であった北畠氏の本拠地に創建された北畠神社。庭園も室町幕府の管領(将軍に次ぐ職位)であった細川高国によって作庭され、一乗谷朝倉氏庭園(福井県)と旧秀隣寺庭園(滋賀県)とあわせて日本三大武将庭園といわれている。
北畠氏館跡庭園は一乗谷朝倉氏庭園(福井県)と旧秀隣寺庭園(滋賀県)とあわせて日本三大武将庭園といわれている三重県を代表する庭園。実家の最寄りの庭園であるが、44歳になるまでその存在に気づかなかった。ということで、2019年元旦に取材。元旦は無料開放されていたが散策する人は少ない。
北畠氏館跡庭園の最大の見所は、庭園東部にある須弥山石と九山八海石である。中央の立石が須弥山石であり、その周りに「九山八海」を表現する石が渦巻き状に組まれている。これは、古代インドの宇宙観に世界の中心にそびえ立つという巨大な須弥山があり、その須弥山を囲む九つの山と八つの海を表現した石。要は仏が住する清らかな世界・浄土の意味を強調した浄土式庭園である。
須弥山石と九山八海石を観賞できる苑路が設けられており、北部から眺める。
さらに視点を変えて撮影。須弥山を中心に石が渦巻き状に組まれているのが分かるだろうか。
庭園入口の橋近くには亀を見立てた亀石が見つかる。
庭園西部から東方向を撮影する。赤枠で囲った左が石橋で、右が亀島となる。それぞれ視点を変えて撮影してみると、
石橋はこのように4隅に石が据えられている。Hakka氏のサイトによると、ほとんどの石組が付近の川原石などを使用しているのに対し、この石橋は志摩の海石を使用している
とのこと。
亀島を横から眺める。豪快な護岸石組であり室町時代を思わせる迫力ある意匠である。
亀島の北側は出島になっており、実に入り組んだ池泉になっている。看板には「曲水池泉の鑑賞式庭園」と記載されているが、確かにそのように造形である。
庭園入口近くの橋の右手(西側)には、ハート型に近い形状の座禅石がみられる。
最後に須弥山石と九山八海石を望む。また、庭園は「米」字形をする園地と立石による枯山水で構成とのことだが、この部分が「米」字形の上部だろうか。庭園ファン以外には知られていない庭園であるが、趣ある名園である。苔で覆われているため、雨天時も訪れてみたい。
○ | 小さな西芳寺を思わせるような室町末期の名園。特に須弥山石と九山八海石は見事で、庭園本来の魅力を存分に楽しめる。 |
× | 特に見あたらない。 |