曹洞宗の青岸寺は、室町時代初期(1356)に米泉寺として創設。江戸初期(1656年)に寺号が青岸寺となる。現在の庭園は1687年に作庭され、昭和9年に国指定名勝を受ける。
庭園巡りを開始して217ヶ所目となる青岸寺。これまで巡ってきたなかでベスト10にはいる名園だと感じた。さっそくその魅力をレポートしていこう。
観音菩薩の降り立つ伝説上の山とされる補陀落山(ふだらくせん)の世界を表現した枯山水。通常、海を表現するのに白砂が使われるが、青岸寺では杉苔が用いられている。さらに雨天だったこともあり、苔が青々している。苔の枯山水の庭園であることを知らずに訪問したものだから、この光景には正直驚いた。
正面には後述する鶴亀島(蓬莱島)、その奥には三尊石と枯滝石組を確認できる。石組が多くこちらの写真では分かりにくいため、別角度の写真を次に掲載。
画面上部が三尊石であり、画面中央部が枯滝石組となる。
三尊石を焦点距離200mmの望遠レンズで捉える。中央の主石である中尊石は天を突くような鋭い石である。
青岸寺では、庭園を中心にL字に書院や客間が配置されているため、いろいろな角度から庭園を楽しめる。枯滝石組を横から眺めれば、このような迫力ある石組であることがよく分かる。画面中央の小さな平石をズームしたのが次の写真である。
焦点距離300mmで撮影すると、滝口はベロを出したような意匠であり、「離れ落ちの滝」をイメージしたようにも見える。
庭園東部には築山が造られ、集団石組がみられる。また写真中央の平石は、礼拝石(らいはいせき)のようにみえるが船着石とされる。礼拝石:庭園のビューポイント
庭園北西部には、桃山時代風の切石による反り橋が架けられている。まるで渓谷のような景観を作り出し、杉苔と合わさって大変美しい。画面上部には座敷がみえる。
その座敷からの額縁庭園を撮影。一段高い場所に座敷があり、景観ががらりと変わる。
先ほどの石橋越しに三尊石、枯滝石組を望む。右手には鶴亀島の一部が映っている。
鶴亀島(蓬莱島)を解説。蓬莱島の護岸石組は二重になっており、外側の石組は亀石組、内側は鶴石組となっている。つまり亀に鶴が乗っている鶴亀島である。左側の石が亀頭石であり、中央の中心石が鶴石組における羽石となっている。蓬莱山も表現している。出典:名園の見どころ(著:河原武敏) 蓬莱山:不老不死の仙人が住んでいるとされる山。
鶴亀島(蓬莱島)を別角度から眺めると、松の幹下にある石が亀頭石にも見えてくる。いまにも動き出しそうな迫力だ。
青岸寺には「寺カフェ」もあり、抹茶やプリンなどの甘味も頂ける。住職も奥様も素敵な方で、居心地の良いお寺である。また、大雨により苔庭が雨水で埋まり池泉庭園になるとのこと。年に数回だけの奇跡の景観であるが、この目でみたいものだ。
○ | 奥行きの深い地割りにより立体感ある空間。さらに全国的にも希有な「苔の枯山水」が加わることで、心安らぐ庭園になっている。屋根のある縁側から庭園を眺めるスタイルであるため、苔が青々しくなる雨の日に訪れるのがおすすめ。 |
× | 特に見あたらない。 |