江戸初期(1666)に現在の永安寺と改められた曹洞宗寺院である。庭園も江戸初期作庭され、昭和58年(1983)に県指定名勝を受ける。
新日本三大夜景「笛吹川フルーツ公園」から車で10分ほどのところにある永保寺。観光客とは無縁のロケーションにひっそりと江戸時代初期の日本庭園が本堂裏手に存在する。
荒廃しているようにもみえるが、無駄な植栽は排除されており、落ち葉が残る程度である。庭園は山畔部(やまくろぶ)と池泉部の上下二段に分かれた地割である。赤線が三尊石であり、青線が蓬莱石である。それぞれについて説明していく。地割:庭園設計
まずは三尊石。中央の天を突いたような主石(中尊石)と両脇の添石(脇侍石)で組まれている。
続いて立石で据えられた蓬莱石は、手の形のようにもみえるの面白い自然石である。また借景となる山並みとの調和も美しい。余談ではあるが、この山には夜景の美しい日帰り温泉「ほったらかし温泉」がある。何度も通った私の大好きな温泉のひとつである。
蓬莱石のある庭園東部は集団石組がみられる。手前から奥に従って石に迫力がでるような組み方で、特に最後部の列は石を縦長においた立石中心で組まれていることが分かる。そのなかで、右手にどこか柔らかな印象をもつ石灯籠がみえる。
近づいて撮影すると、このような上品な意匠である石灯籠である。
池泉部に近づいて煽るように撮影。手前の石組が枯滝石組であり、その奥には、先ほどの手のような形と表現した蓬莱石が見える。見る角度によって、石の表情はまるで変わり、ここから蓬莱石を眺めると山形にみえる。
枯滝石組を違う角度から撮影。青線のエリアが枯滝石組であり、池泉へと注ぎ込まれる構図である。
さらに別角度から枯滝石組を撮影。ここから眺める石組は全て立石であり、絶妙なバランスで組まれているように感じる。
枯滝石組の下部を撮影。手前には自然石による石橋が架けられている。
永安寺は少し高台にあり、境内からは写真のような風景が広がり、もう少し左側を眺めると富士山も確認できるロケーションだ。
○ | 借景と山畔を活かした地形に三尊石、枯滝石組、蓬莱石など意欲的な石組を愉しめる。 |
× | 特に見当たらないが、池泉鑑賞式庭園のため視点場である書院から眺めてみたくなる。 |