引接寺は室町時代(1488)に、天台真盛宗を開祖した真盛上人によって開山した天台真盛宗別格本山。境内には見学可能な池泉回遊式庭園の本坊庭園、および一般開放されていない小堀遠州によって作庭された客殿庭、書院庭園(明治初期)、裏書院庭園(平成元年)がある。
天台真盛宗の別格本山である引接寺。境内案内図を眺めると庭園の場所が分かり、本堂横から庭園に向かい見学させていただく。天台真盛宗の総本山が滋賀県大津市にある西教寺であり、西教寺には小堀遠州による庭園が残されており、本寺院にも小堀遠州による庭園があるが、客殿庭園となっており見学できなかった。そのため今回紹介するのは本坊庭園となる。
白砂には砂紋が描かれ、書院の沓脱石から池泉に向かって飛石を打っている。
飛石は徐々に高さを下げ、そして軒先から滴る雨水の跳ね返りを防ぐために石を並べた砌(みぎり)の意匠も興味深い。砌は瓦を縦に並べたり、木炭を並べたりなどいろいろな意匠があるが、ここでは石を並べている。
刈り込みのなかを突っ切るように飛石を打ち、岩島と石橋で池泉を渡れるが、不安定であるため実際に渡るのは避けたほうが良いだろう。
沢飛石と石橋によって構成されている。
2枚の自然石によって弧を描くような石橋となっている。また写真右手奥にも、池泉に向かって沢飛石が打たれているところにも注目したい。
沢飛石が池の中で止まる形式は「舟附き渡り」と呼ばれるが、本来の要素である「舟附き」に向かうという用途ではないことは明白だ。ちなみに舟附き渡りの沢飛石は相楽園(神戸市)などでも見られる。
舟附き渡りを別角度から撮影。力強さを感じる岩島と組み合わさり、本庭園で最も美しい光景だ。また右の岩島と対峙したような感じも良い。
石橋の北東部ある出島風の石組は亀出島のようにもみえる。
草により分かりにくいが滝石組を設けて、鯉魚石のような立石もある。庭園の主要素となる滝石組周辺の草が除去されていないのが惜しまれる。
引接寺境内図。庭園への向かい方を赤矢印で追記しています。 [ 案内図を拡大する ]
○ | 池泉の三連石橋、舟附渡り周辺の岩島などの意匠が希有なもので良い。 |
× | 滝石組周辺の草により滝石組の存在が失われている。 |