医王寺(醫王寺)
いおうじ
奈良時代(733年)に、日本で最初の大僧正(最高位)となった行基によって開基されたと伝わる医王寺。庭園は江戸初期に造園され、作庭家は江戸幕府の茶人としても知られる庭園デザイナー・小堀遠州(こぼりえんしゅう)ともいわれるが、寺伝などは残っていない。
苔が広がる参道に切石による延段が敷かれており、厳かな雰囲気を感じさせてくれる。山門は江戸時代(1847)に造られたものである。
まずは客殿南側の庭園を撮影。後述するが、刈り込みにも注目したい庭園である。
そして西側の庭園は、意欲的に巨石を使った枯山水である。青いマーカー部が、後述する枯滝石組と枯流れである。築山には椰子の木のような蘇鉄(ソテツ)が植樹されている。日本庭園にソテツが用いられたのは室町時代からといわれ、全国各地の日本庭園でよく見られる伝統的な技法なのだ。
築山の頂部には三尊石組を据え、下部には先ほどの写真の青マーカー部分となる枯滝石組が造られ、
地上部には枯流れを造り、枯流れ護岸石組にして深山の渓谷を表現している。
続いて南庭。スギゴ苔の大海に石組がある構成。丸みを帯びた刈り込みと、立方体の刈り込みにより、遠近感を生み出している。
左手には立石が据えられ、よく手入れされた刈込みであることがわかる。
医王寺では、江戸時代の大名駕籠(カゴ)がいまも現存している。
寺院前の前庭も見所であり、円を描くような刈込みに蘇鉄を植樹している。
杉苔の庭には、複数の石組を据えている。
三尊石組を初め、五石で組まれた石組などもみられる。
駐車場近くには丸石を多用した石壁。そして二段落としの枯滝石組もみられる。
○ | 手入れの行き届いた刈込みによる枯山水は、見ていて気持ちいい。 |
× | 西庭の枯滝石組は、刈込みによりその姿が判別にしにくくなっているのは少々惜しい。 |