実光院は天台宗の寺院であり、大正8年(1919)に現在地に移転。園内には実光院が移転する前の普賢院にあった江戸時代後期に作庭された池泉観賞式庭園と、昭和30~40年頃に作庭された池泉回遊式庭園の2つがある。
三千院と宝泉寺の間にある実光院。大原エリアでは比較的落ち着いて庭園観賞できる寺院だ。まずは客殿から江戸時代後期に作庭された池泉庭園「契心園(けいしんえん)」を望む。
律川(りっせん)から水を引いた心字池は透明度が高く、高潔な雰囲気が漂う。心字池手前が此岸(しがん)と呼ばれる「現世」で、築山は彼岸(ひがん)と呼ばれる「来世」を表現し、築山全体として極楽浄土をイメージしている。
図解するとこのようになっている。心字池に配された中島は亀島であり、築山の頂には松を植樹しており、これを鶴に見立てている。日本庭園では松を鶴に見立てることが多い。左手には小型の滝石組が作られている。
角度を変えて、鶴と亀を眺める。10月下旬に訪問したが築山は新緑で覆われていることもあり、松を認識するのが難しい。紅葉時期もしくは、松は冬でも葉が散らないため冬期に訪れると松が引き立つ。
滝石組を撮影。小降りであるが、丸みを帯びつつ穏やかで品格のある石で組まれている。
亀島は苔付いた飛び石で繋がっており、築山には石段が設けられていることが分かる。
お寺の方に話を伺ったところ、契心園は江戸時代からほぼ手を加えずそのままとのこと。
客殿から西側を望むと、昭和に作庭された池泉回遊式庭園があり、大原の山並みを借景としている。
池泉回遊式庭園の池泉。
石灯籠で最も美しい造形と考える織部灯籠。織部灯籠は竿に特徴があり、竿特徴が円形でアルファベットの「F」の様な彫り込みがあり、下部にはキリスト像が彫られていることが多い。キリスト像が彫り込まれているのはキリシタン灯籠とも呼ばれ、江戸時代初期のキリスト教禁止令後も、密かに信仰を続けていた隠れキリシタンの信仰物だった。
苔庭にユリ科のホトトギスが開花していた。コンパクトな庭園であるが、三千院や宝泉院よりも落ち着いた空間であり心地よかった。
○ | 築山に囲まれた鶴亀庭園は小型ながらも凛とした美しさがある。また、客殿から西側にある池泉回遊式庭園は借景の大原の山並みが美しい。 |
× | 築山に植栽が多く、鶴に見立てた松が引き立っていない。 |