光前寺は平安時代(860)に創建した天台宗の別格本山である。天台宗は延暦寺を総本山とし、その次に大本山、別格本山、本山という寺格になる。本堂前庭は、重森三玲らによって鎌倉建長寺を開山したことで知られる禅僧・蘭渓道隆(らんけいどうりゅう)による龍門瀑と推測。本坊客殿庭園は江戸初期とされ、両庭園は昭和42年(1967)に国指定名勝を受ける。
光前寺庭園は有料の本坊客殿庭園が注目されるが、本堂前庭がハイライトなのである。三重塔と本堂の間に滝石組を造った池泉回遊式庭園である。これが、鎌倉の建長寺や、甲府の東光寺を開山した鎌倉時代に南宋から渡来した禅僧・蘭渓道隆(らんけい どうりゅう)によって作庭されたとされる。
焦点距離110mmの中望遠レンズで滝石組を撮影。これがまさしくハイライトとなる龍門瀑(りゅうもんばく)ある。
龍門瀑とは滝石組の一種であり、斜めに据えた鯉の滝登りに見立てた鯉魚石(りぎょせき)がある立石が特徴である。鯉魚石とは、中国の鯉が滝を登ると龍になるという故事「登竜門」にちなんだ鯉を石に見立てたものである。もちろん鯉が滝を登るようなことはできないが、ひたすら修行を繰り返すという禅の理念を石組で表したのを「龍門瀑(りゅうもんばく)」と呼ばれる。また、滝頂部には遠山石(えんざんせき)であり、遠山を抽象的に表現したもので、滝に奥行き感を与えている。
立石を意欲的に組んだ力強い龍門瀑である。ただ近づいて観賞できないため、その魅力を感じとることが難しく、多くの観光客がこの滝石組に注目することなく過ぎ去ってゆく。
龍門瀑を横から撮影。造園家の斉藤勝雄によると、手前の斜めに据えた立石は龍頭石と名付けたそうだ。鯉が滝を登ると龍になるという龍門瀑であるから、その頭がこの石組ということだろうか。
「名園の見どころ(著:河原武敏)」によると、左に鶴首石があり羽石は崩れて見つからない、そして右側に亀頭石がある鶴亀庭園になっている。そして護岸石組に溶け込むように三尊石組も造られている。
中島西岸の護岸石組。そして杉の根元を取り囲むような石組も見られる。
龍門瀑。
続いて有料エリアである本坊客殿庭園の書院から額縁庭園を撮影。
山畔を築山とした池泉観賞式庭園であり江戸初期に作庭された。江戸末期の庫裏立て替えにより池泉手前は不自然な直線状の護岸となる。
山間から水を引いて流された滝石組は、刈り込みなどにより石組が分かりにくい。池泉の手前にある岩島は、滝水を左右に分ける水分石を兼ねている。また奥座敷にも龍門瀑に似せた滝石組があるようだが、見学ルートになっていないため確認できなかった。
書院(庫裏)と庭園を撮影。
手水鉢にグラデーションの美しい紅葉。
光前寺境内(パンフレットより引用) [ 案内図を拡大する ]
○ | 鎌倉時代に蘭渓道隆により作庭されたとされる龍門瀑の造形が美しい。また龍門瀑の上段に鯉魚石を配置した構成は、天龍寺 曹源池庭園と山梨の東光寺の3例しかない珍しいものである。 |
× | 特に見当たらない。 |