地元の大庄屋(村長的な役割)を務めた旧家・百瀬家。松本市の特別名所にも登録されている邸宅庭園は、モダンな庭園造りで知られる日本庭園史の研究家・重森三玲(しげもりみれい)によると、江戸中期から末期にかけて作庭されたと推測され、事前予約にて見学できる。
書院南側に築山を設けた池泉回遊式庭園である百瀬家庭園。訪問時は水を張っていないが、農業用水を引き入れており水量状況によって水門を閉じ枯池としていることがある。
築山には左右に好一対(良い組み合わせのこと)の枯滝石組が造られ、築山は二重護岸の石組とすることで東西の枯滝石組を関連付けている。
まずは西側(庭園に向かって右側)の枯滝石組。護岸石組は横石を組み合わせた力強いものであり、様々な要素が詰まっているため次の写真で図解していく。
まずは枯滝石組。下部には水を左右に分ける水分石を配している。頂部には鋭い立石による三尊石組(赤マーカー)、そして富士山型の一石と、遠山石の二石による三尊石組(緑マーカー)があり後述する。
西側の枯滝石組を別角度から撮影。頂部には先ほどは異なる立石による遠山石(えんざんせき)と合わさり秀逸な意匠である。遠山石:遠山を抽象的に表現した石で滝に遠近感を与える
西側の枯滝石組の迫力ある護岸石組を撮影。
赤色のマーカーで囲んだ三尊石組を撮影。他に例を見ないような象徴的な三尊石組だ。
緑マーカーの左側は富士山型の一石、そして右側に寄り添うような配置の二石で、意表をつくような三尊石組である。
三尊石組の手前にも切石などを用いた石組がある。
続いて東側の枯滝石組。写真左に鯉魚石(りぎょせき)を設けていることから龍門瀑(りゅうもんばく)と推測される。
写真左下が、鯉の滝登りに見立てた鯉魚石(りぎょせき)であり、中国の鯉が滝を登ると龍になるという故事「登竜門」にちなんだ鯉を石に見立てたものであり、このような滝を龍門瀑(りゅうもんばく)と呼ぶ。鋭い稜線の滝添石は右側に傾斜しているが、左奥にある連山石組と相まって安定した造形になっている。
東側の枯滝石組を別角度から撮影すると、二重の護岸石組であることがよく分かる。
中尊石には切石を用いた三尊石。
竿が三日月のような造形となった石灯籠は、余り見かけないユニークなものである。事前予約が必要となる庭園であることもあり、年間10人ほどの見学者とのこと。こういった邸宅にある庭園は、当家の事情で見られなくなる可能性もあるため、早い段階での見学をお薦めしたい。
○ | 横長の築山に2つの枯滝石組があり、どちらも力強く見応えある。また園内に複数ある三尊石も意表をついたユニークなもので面白い。 |
× | 特に見当たらない。 |