西南院は昭和初期に真然大徳によって開基された高野山真言宗の寺院である。境内には重森三玲が昭和27年(1952)に作庭した池泉庭園があったが、現在は改修され当時の姿を見られない。西南院は宿坊を兼ねており、宿泊者もしくはCAFE利用者のみ見学できる。
モダンな庭園造りで知られる日本庭園史の研究家・重森三玲が56~57歳の頃に高野山に6ヶ所の庭園を手掛けており、その最初に作庭したのが西南院である。作庭当初は本堂前に枯山水としての密教的庭園を作庭し、その後に書院前庭として池泉回遊式庭園を作庭した。
枯山水は本堂造築のため取り去られた。では、池泉回遊式庭園はどうなっているのだろう。
それがこちらの様子である。園内には立ち入れないため、詳細は確認できないが水が涸れた枯池となっている。ただ、これは当初の様子ではなく改造されて、作庭当初の様子はほぼ見られない。作庭当時の写真が廊下に掲示されていたので撮影してみた。
亀島、鶴島のような石組はあるが、当初の意匠とは異なっている。現在の亀島の奥には、龍門瀑が残されているようだが、草木の生長で視界が塞がれている。滝石組の奥には三尊石風の遠山石があり、滝添石の間には鯉魚石がある。
新たに組み直された鶴島。鶴島には山形の中心石を配し、枯池には岬灯籠を置いている。
幸いにも地割りが変わっていないため、廊下に張ってある当時の写真を思い出しながら、当時の様子をイメージすることはできる。
枯池は単調ではなく豊かな形状で、出島は州浜風に処理している。また、夜はライトアップされるようで、照明機器が置かれている。
左が亀島、右が鶴島。
池泉回遊式庭園の南部。
こちらの渡り廊下でカフェをしながら庭園観賞を楽しめる。
紅葉シーズンの高野山は冷え込むため、ここで暖かいカフェモカをいただきながら休憩。
○ | 亀島と鶴島のある本格的な庭園を、カフェを頂きながら暖かい空間で楽しめるのは、宿坊利用者以外では高野山ではここだけだろう。 |
× | 草木の生長により、重森三玲の石組が残る龍門瀑が見られなくなっている。 |