坪川氏邸宅は福井県に現存する最古の民家であることから、「千古の家」と名付けられている。坪川氏庭園は千宗旦(せんのそうたん)の弟子である茶人・山田宗徧(そうへん)によって江戸中期に作庭されたと伝わる。千古の家は国指定重要文化財、庭園は2007年に国登録記念物庭園の登録を受けた。
福井県最古の民家に残る江戸時代に作庭された庭園。福井市の国指定名勝「養活館」を作庭した千宗旦(せんのそうたん)の弟子である茶人・山田宗徧(そうへん)によるものを伝わる。
北側の池泉が見どころとなっているが、パンフレットの解説がないと理解が難しい。
パンフレットのテキスト解説に従って図解してみる。まず山畔を築山と見なして、山頂には三尊石組。三尊石組から池泉に向かって彫り込まれた部分は滝となり、三尊石組が枯滝石組を兼ねている。三尊石組の左手には、平板状の立石と数個の小振りの石からなる蓬莱石組となっている。
三尊石組に近づいて撮影してみる。パンフレットでは「三尊石組右手の立石と横石は陰陽石組になっている」と記載されている。立石が陽石(男性器に見立てている)で、低い石が3つあるように見えるが、おそらく中央と右がひとつの石で窪みで女性器見立てた陰石となっているのだろう。つまり子孫繁栄を望む庭園でもあったことが分かる。
蓬莱石組とあるが、笹などサツキで覆われ石組が弱まっており、パンフレットの解説文では特定できず、記事作成時にようやく石組を見つけた次第だ。
礼拝石を思わせるような板石。
2つの池を眺める。
池泉を見下ろす。護岸石組は長石など使いながらも複雑な池泉の形状をうまくまとめている。
大雨のなかでの撮影は大変であるが、晴天だと影ができてしまうため、庭園撮影は晴天よりも雨天のほうが有り難いことも多い。またパンフレットには「当庭園の石組には宗教姓や思想性が内包されていて「心の庭園」あるいは「祈りの庭園」と呼ばれている」と記載されている。
飛石の先には開口部があるが、豪雪地帯の農家であるため小さな開口部が特徴。そのため池庭を観賞するために、屋外にでる必要がある事例としても貴重。
重厚感に満ちた茅葺屋根の坪川家。
民家は昭和41年に国の重要文化財に指定され、昭和43年~44年に解体修理が行われ、建築当初の形態に復元されている。ちなみに「千古の家」では花菖蒲園があり、紅葉シーズン以外では菖蒲が見頃となる6月の訪問がおすすめ。
○ | 陰陽石組を兼ねた三尊石組を見られる、おそらく日本唯一と思われる貴重な庭園。 |
× | 草木により蓬莱石組が見えにくくなっている。 |