少林寺は鎌倉末期(1334)に創建した臨済宗相国寺派の寺院である。庭園は寺院が再整備された江戸初期に作庭されたとされ、事前の電話連絡で見学できる。
江戸時代初期に造られた池泉庭園は、事前連絡により見学できる通常非公開の庭園である。電話で見学の旨を伝え、朝8時の訪問も快く応じて頂けた。庭園は書院裏にあり室内に入ること無く自由に出入りでき、事前の許可があれば住職不在でも見学できるので安心だ。さて、まずは本堂裏の庭園から見ていこう。山裾という自然の立地を活かして奥行きをだし、かつ立体感が生まれている。
庭園南部は滝石組を中心とした造形で、図解すると次のようになっている。
滝石組の頂部には遠山石(えんざんせき)を据えて、遠山を抽象的に表現している。そして水が落ちるところに茶色の石があり、これは鯉魚石(りぎょせき)と思われる。鯉魚石とは鯉が滝を登りきると龍になるという伝説のことで、もちろん鯉が滝を登るようなことはできないが、ひたすら修行を繰り返すという禅の理念を表現したものである。鯉魚石のある滝石組を龍門瀑(りゅうもんばく)と呼び、兵庫県では龍門瀑は珍しい。また出島には斜めに据えた巨石があり、亀出島と思われる意匠だ。巨石はさならが亀頭石だろうか。
滝石組を撮影。滝水は渓谷に流れ、やがて大海(池泉)に至るという意匠である。また、こうやって撮影すると遠山石は山に見えてくるので不思議である。
角度を変えて撮影。茶色の石が鯉魚石である。
2つ出島に石橋がかかる。奥の出島が亀出島とすると、手前の出島は鶴出島だろうか。すると平らな立石が羽石とも推測できる。また池泉手前に薄い石を浮かべている。滝石組を見られない場所なので礼拝石ではなく、舟着き場をイメージしているのだろうか。
ここまでに紹介した池泉庭園は、写真右手にみえる本堂裏手にある。左手の観音堂は石組で組まれた高台にあり、下部は排水を兼ねた龍池式の池泉庭園となっており、こちらは自由に参拝できるような敷地と思われる。龍池式:水路のように取り巻くように造れらた池
観音堂周辺の庭園は集団石組で構成され、池泉には七福神のひとり弁財天が祀られている。
集団石組には荒々しい力強い石組となっており、江戸初期の風合いを残している。
○ | 本堂裏の池泉庭園が見事であり、コンパクトながら山裾を利用することで奥行き感があり、かつ立体感が生まれている。 |
× | 特に見当たらない。 |