かつては、創建1300年の興福寺の子院「摩尼珠院(まにしゅいん)」があったといわれる場所。明治には民間所有となり大正8年(1919)に現在の建物と庭園が造られた後に奈良県所有となり平成元年(1989)に一般公開された。
国指定名勝の依水園に隣接した吉城園。依水園は見事な庭園ですが、東大寺から少し離れていることもあり本エリアに訪れる観光客が少なく、奈良県民でも吉城園を知っているひとは意外と少ないとのこと。吉城園は「池の庭」、「苔の庭」、「茶花の庭」の3ブロックに分かれている。まずは、物見台から池の庭を見下ろす。
物見台はこんな感じ。
池の庭を眺める。写真に見えている建造物が、建築家・隈研吾(くまけんご)デザインの最高級インターナショナルホテルとなるようだ。森トラストグループ運営で2019年の開業。吉城園の保存を目的とした事業であり、今後も庭園として一般公開されることだろう。
2019年にはホテル敷地となる縁側に腰を掛けてみる。
縁側からの眺め。小雨が降っているが、この庭園は雨でも比較的楽しめるかな。
縁側から池の庭を眺める。正面にある東屋が物見台である。
「池の庭」から「苔の庭」へ向かう途中に茶室がある。事前予約の有料で利用できるが、予約なしでもチラ見はできる。
茶室から苔の庭を眺めるとこんな感じ。ちょっとした額縁庭園を楽しめるかな。
階段を上っていくと苔の庭に到着。そう、吉城園は起伏のある庭園なのだ。
日本庭園の魅力は「苔」と「砂利」と思っている。曲線美のグリーンとシルバーが見事に調和。
苔の庭には、一部芝生も混ざっているが、これはこれで美しい配置だと思う。
鉄鉢型(てっぱつがた)の手水鉢(ちょうつばち)は苔で覆われ趣がある。竹で造られた水を流す樋(とい)は筧(かけい)と呼ぶ。手水鉢の右手にある石は湯桶石(手を清めるために一時的に茶室で使う湯桶を置く石)、手水鉢の左手にある石は手燭石(夜の茶会で使う手燭(てしょく)という明かりを一時的に置く石)がある。手水鉢とこれらの石をあわせて蹲踞(つくばい)と呼ぶ。これで、アナタも日本庭園ツウ。
続いて「茶花の庭」を訪れるが、6月の見所は特になくちょっとした竹林ぐらいだったので、本記事では紹介しないでスキップ。
ぐるっと庭園を巡って、苔山に囲まれた小径を歩いて庭園を出入り口に向かう。さすがに依水園には敵わないが、250円でこれだけ楽しめるのはかなりコスパの良い庭園だろう。(令和2年より無料となりました)
○ | 観光客で溢れる東大寺や奈良公園と違い静寂な世界。2022年に高級ホテルの開業が予定されており、さらに整備される可能性もあり今後の変化が愉しみな庭園でもある。(当初2019年開業であったが、2022年に延期されました。) |
× | 3ブロック目のクライマックスとなる「茶花の庭」はインパクトに欠ける。ここが枯山水であれば良かったと感じる。 |