観音寺は奈良時代に増慶上人(ぞうけい)によって創建されたと伝わる真言宗の寺院である。湧き出る水で赤ちゃんを洗うと無病息災、安産を本尊に祈願すると産湯を使わなくても不浄にならないと伝わることから「不洗観音寺」と呼ばれるように。山門前の石庭は地元の造園会社・光匠園にて平成27年(2015)に作庭された。
不洗観音寺には客殿に蓬萊登辿庭(ほうらいとせんてい)という江戸時代に作庭された庭園が残るが一般開放されていない。しかしながら自由に拝観できる枯山水と池泉庭園もあり、こちらを見学していく。まずは参道沿いに造られた枯山水を紹介。枯山水は伊予の青石を使用しており、写真は鶴石組である。図解すると次のようになっている。
2石の立石で鶴の羽をイメージした鶴羽石。その前後に鶴首石と鶴尾石となっている。鶴首石の左奥の石は蓬莱島となっている。本庭を現在の姿にした光匠園の公式サイトをみると、鶴石組は元から似たような石組があり、この石組に手を入れて鶴石組と蓬莱島と見立て、さらに亀石組を新設したことがわかる。
続いて光匠園によって新設した亀石組を観察していくが、亀の頭を摸した亀頭石は右が左かお分かりになるだろうか。
作庭者の解説を元に図解すると右が亀頭石になる。そして亀の足となる亀脚石を設けたて具象的な亀石組である。亀頭石と亀尾石を明確に判断する術はないが、鶴石組と亀石組は向かい合って設けられていることが多い。
本庭園も鶴石組と亀石組の位置関係より右側が亀頭石となっている。同時に鶴石組の鶴首石は左側になっている。このような定石を鶴石組と亀石組を観察するときの手がかりにしてみるのもいいだろう。
亀石組を斜め正面から撮影。
続いて境内にある池泉庭園へ。巨大な滝石組を設け、池泉には州浜を造っている。このなかで注目したいのが右手前にある池に島を設けておいた石燈篭である。池泉のなかにこのような石燈篭は珍しい。水際にある石燈篭としては写真の左奥にある岬燈篭がよく見られるケースであるが、このようなタイプは記憶の限りでは国内でお目見えしたことはない。中国では杭州の西湖には似たような意匠があるが、それを模したのだろうか。
滝石組は山の斜面を活かした巨大なものであるが、単独だと大味にみえてしまう。しかしながら岬燈篭と州浜風の出島で脇を締めることでグッと景観が良くなっている。
別角度から撮影。
洞窟石組のような枯山水を見つける。
訪問時期は紅葉シーズンのため参道は紅葉で色づく。
そして参道にも石組がみられる。美しいシルエットをもつ長石を配置しており目を惹く。
参道入口には枯山水も。白砂で大海をイメージして舟石らしき石が蓬莱山に見立てた山に向かっているのだろうか。
作庭意図は不明であるが、こちらの枯山水も見逃せない。
○ | 参道に設けられた鶴石組、亀石組、蓬莱石により長寿を祈願する庭園となっている。分かりやすい構図で庭園初心者にも理解しやすい石組だろう。 |
× | 特に見当たらない。 |