モダンな庭園造りで知られる日本庭園史の研究家・重森三玲(しげもり みれい)によって、昭和43年(1968)に作庭された菰野横山邸園。平成29年(2017)に、邸宅を完全予約制レストラン「ちそう菰野」としてオープンし一般公開される。2020年4月にレストランは閉店となり、年数回開催予定の見学ツアーのみで見学できる。本記事は「ちそう菰野」営業したいた時期に訪問したものである。
【2020年4月にレストランは閉店となり、見学が難しくなりました。】三重県で唯一となる重森三玲による庭園。土・日・月のみの完全予約制レストランで、席に着く前に主人より庭園の解説があります。
主庭は心字型の苔地割の上に、蓬莱式の石組が造られている。日本庭園には草書「心」の字をかたどった「心字池(しんじいけ)」がよく見られるが、重森三玲は枯山水に心字形の苔山を造った。ちなみに、「心字池」は一般的に草書の「心」であるため、かなり崩した字体であり「心」という字に見えないものが多い。
蓬莱山形式の主庭には、蓬莱山に向かって旅立つ石として舟石を据えている。写真手前の石が舟石であり、心の旅を表現しているとのこと。
舟石を別角度から眺める。古代中国ににおける想像上の神山「蓬莱山」には、不老不死の薬があると信じられ、その蓬莱山に向かう舟石を「入り舟」とも呼ぶ。ちなみに京都の重森三玲庭園美術館 無字庵庭園では、入り舟と戻り舟の両方の舟石を見学できる。
天を突いたような立石が蓬莱山とのこと。
主庭東部は苔島、三尊石組、そして飛び石など日本庭園の要素がぎっしり詰まっている。
苔山は十分な厚みがあり、汀も曲線を多用した意匠である。
「紅白の庭」と呼ばれる裏庭は、主庭と同じ時期に作庭された。重森三玲が横山家に電車で訪れたときの車窓からの田園風景を紅白に表したとのこと。廊下が電車内であり、斜めのしきりにより風景が動いているようにみえたことを表現している。
白い白川石、赤い天狗石、延べ段に敷き詰められた青石小判、そして苔で明暗を庭に表現している。
軒下から州浜模様の延べ段が広がり、重森三玲の庭園には多く見られる意匠である。
レストランは木で統一されたテーブルとイスで、主庭と裏庭の両方を眺められる。
座席は指定制で、私が座った席からは、裏庭をよく見える座席であった。予約時に座席をリクエストできる可能性もあるだろう。
ランチは4,000円、4,500円、6,500円のコースがあり、それぞれメインが魚、お肉、両方となっている。地元の素材をふんだんに活かした料理でこだわりを感じさせる。
誰が見ても美しいと感じる和モダンな庭園。三重県で美しい庭を眺めたければ、まずはこちらを訪れてみよう。ちなみに、「現代和風庭園に生きる(著者 重森三玲)」の表紙は、こちらの庭園が使われている。
○ | 白砂に複雑な曲線を描く苔山の組み合わせが美しく、重森三玲の魅力が分かりやすく詰まった庭園である。 |
× | 年数回開催予定のツアーでしか見学できない。 |