願行寺は室町時代(1495)に創建した浄土真宗本願寺派の寺院である。蓮如上人(れんにょしょうにん)が吉野地方での布教活動の拠点として開山した寺院で「下市御坊」とも呼ばれている。江戸時代に再建された浄土真宗寺院の形式をもつ本堂と大書院の間には室町時代末期の枯山水が残されており、奈良県指定名勝を受けている。上人:高僧への敬称
訪問前に見学可否について電話確認が好ましい願行寺庭園(法事などがなく、お寺の方がいらっしゃれば見学可能)。大書院からの玉石を大河に見立て枯山水を眺める。奥には江戸時代に建築された本堂がみえる。
L字型の敷地になっており、本堂のある塀側は築山で高さを上げている。そして本庭園では見どころが多く、まず目を惹くのが左側の石組だろう。
こちらは石橋のようにもみえるが、左側に中島や出島などがないことから洞窟石組とみられる。豪壮ながらも厚みを抑えた板石は品格を感じさせてくれる。洞窟石組とは不老不死の仙人が住むとされる蓬莱山には仙人が住む洞窟があるとされ、それに見立てた石組である。室町時代以降の桃山時代には洞窟を模した庭園が多く造られている
洞窟石組を別方向から撮影すると行き止まりの石橋のようにもみえる。
菱形の板石と2つの山形の立石は、岩島に見立てている。
中央の立石は遠山を抽象的に表現した遠山石であり、下部は枯滝石組とされる。
護岸石組には、やや傾斜を持たせて変化を付けている。
庭園東部の築山頂部には蓬莱山に見立てた蓬莱石を据え、集団石組風に護岸石組も組まれている。
大書院の内縁からの眺め。
大書院から額縁庭園を撮影。ほぼ貸し切り状態になる庭園であり、600年程前に作庭された室町時代の庭園に、ゆっくりと静かに向き合える素敵な時間を過ごせた。
○ | 豪壮な洞窟石橋や、三石による岩島、滝石を思わせるような遠山石など、ひとつひとつの石組が単調ではなく美しい。 |
× | 特に見当たらない。 |