彦根城の築城約50年後となる江戸初期に、彦根藩4代藩主の井伊直興(なおき)によって整備されたとされる大名庭園。玄宮園に隣接する彦根藩の二の丸御殿でもあった楽々園と合わせて「玄宮楽々園」として、昭和25年(1950)に国指定名勝に指定された。
彦根城のお堀沿いに作られた大名庭園。大名庭園とは江戸時代によって作られた庭園のことであり、一般的には規模が大きく美しく整備されているが、精細さに欠けるところも多い。一方、玄宮園は石組に力強さと繊細さを感じさせる名園である。
玄宮園で最も美しいと感じたのが、魚躍沼(ぎょやくしょう)越しに眺める鶴鳴渚(かくめいなぎさ)と名付けられた鶴島である。天を突くような立石は鶴の首に見立てた鶴首石(かくしゅせき)であり、鶴島の景を引き締めている。
鶴首石を別角度から撮影。
鶴島の先には荒磯(ありそ)らしき意匠がみられる。荒磯:荒々しい磯場。
船小屋跡から鶴島東部を望む。護岸石組は巨石が使われ強さを感じる。
高橋が架かる中島は亀島であり、写真に赤色の▲が亀頭石となっている。
亀頭石を高橋から見下ろす。確かに亀の頭のようにみえる。写真下の横長石は亀脚石(ききゃくせき)だろうか。
亀島の南部を望むと、力強い護岸石組がみられる。玄宮園で亀島はあまり注目されないが、鶴島同様に見応えある意匠だ。
玄宮園東部の築山を望む。こちらも美しい光景であり、築山の頂には枯滝石を据え、滝下部には白砂が敷かれ蓬莱石を据えている。(それぞれ写真に▲マークを記載)蓬莱石は築山に据えることが多いが、このように水面近くに据えていることもある。有名庭園では山口市の常栄寺 雪舟庭が挙げられる。
先ほどの築山を別方向から撮影。砂浜は曲線を描き、絶妙な配置で岩島や松を植樹している。また、築山の頂には枯滝石も確認できる。
龍臥橋の脇に枯流れが作られている。
三尊石風に配置された岩島越しに高橋と亀島を望む。
臨池閣(八景亭)からの眺めが施設名からしてもベストビューだろう。ここから眺められないのが唯一の心残りである。
玄宮園の案内図(パンフレットより引用) [ 案内図を拡大する ]
○ | 大名庭園にして品格と力強さを感じさせる名園である。特に鶴島と亀島の両方共見応えあるのは珍しい。 |
× | 最も景観の美しいと思われる臨池閣(八景亭)が非公開である。 |