持宝院は奈良時代に法隆寺東院の復興に尽力した行信(ぎょうしん)にて開基されたと伝わる。室町時代末期に現在地に移築・再興された。境内には京都の建仁寺 潮音庭(ちょうおんてい)を作庭した北山安夫氏によって造られた庭園がある。平成28年(2016)より作庭中で、少しずつ拡張しており令和3年(2021)時点では、完成途中となっている。
本庭園を作庭した北山安夫氏によると、日本庭園の要素をもちながら、形式張った日本庭園として捉える必要のないよう柔らかい庭園にしており、皆さんが集いやすい空間を意識して作庭したのこと。
賽の河原をイメージした石庭。複雑に意識が配置され、庭園の定石にとらわれずダイナミックな意匠に仕上げている。
舟石のような巨石は力強く、石庭の中でもひときわ目を惹く石である。
石庭のなかも廻遊できるように飛石を配置しており、様々な角度から石の表情を感じれらるのが良い。
石庭前には白砂敷き空間があり、大小2つの岩が横たわっている。これは「親子亀」として紹介されており、大海を泳ぐ親子の亀をイメージしている。小さいほうの岩は、確かに亀のように見える。
北山氏が日本庭園に人が集うような空間にしたいという話からも、このような親子をモチーフとした石組を置いたのだろうか。
続いて池泉回遊式庭園へ。
極楽浄土をイメージしたような庭園。汀には岬灯籠を置き、大きめの石で洲浜を造っている。
池泉の奥には三尊石風に組まれた石組がある。滝石組を兼ねた石組だと思われ、一番奥の石を遠山石として、滝水が池泉に流れ込むようにみえる。護岸石組も2段目の滝石組となり、池泉の岩島は水を左右に分ける水分石となる。
山門側を撮影。
両側に苔庭に巨石を並べた苑路を歩けるようになっている。
茶室はないが、蹲踞(つくばい)を設けている。奥にある石灯籠は織部灯籠であり、竿にキリスト像を彫られていることからキリシタン灯籠とも呼ばれている。
池泉回遊式庭園の隣の敷地には、銀閣寺型手水鉢と似たような意匠の手水鉢が2ヶ所置かれている。どうやら本庭園はまだ拡張中のようにみえる。次回訪問するのが楽しみになってきた。ジーンズストリートにある寺院で、観光ついでに気軽に立ち寄れるのも嬉しい。
○ | ダイナミックな石庭と、落ち着いた穏やかな池泉回遊式庭園と見応えがある。特に無数の巨石が置かれた石庭は、他に例をみないもので必見。 |
× | 街中にあるため回避が難しいが、庭園の背景に住宅が入り込んでしまうのは残念。 |