菊屋家はもう離反の城下町造りに尽力して藩を支えてきた豪商。屋敷は勅使や大名の宿泊施設である本陣としても利用されてきた。全国でも最古に属する町家として重要文化財の指定を受ける。常時公開される江戸時代に作庭された枯山水と、春と秋のみに特別公開される明治時代に作庭された新庭庭園がある。
萩には大小多くの庭園があるが、誰にでもお薦めできる庭園として真っ先に挙げたいのが菊屋家住宅の庭園である。まずは常時公開されている江戸時代の庭園から見学するが、重厚感ある書院からの額縁庭園に圧倒。外縁の床材は欅(けやき)であるが、町人は縁に欅材を使用することが禁じられていたため、これを隠すために杉材で覆いを造ったと伝えられており、現地も杉材で覆われており、一部だけ外して欅の縁を見学できるようになっていた。
巨石による沓脱ぎ石。
庭園の中央にある大石は幕府からの意思伝達を伝える上使等が、庭園南側に設けた御成門を経て、大石に加護を置き、縁側から入室されたと伝わる。また庭の中心に短冊石を置き、その周辺に臼石などの丸石を配置する飛石組手法を用いた出雲流庭園に類似した意匠もみられる。
枯山水には子孫繁栄を願う陰陽石や、鶴亀などに見立てた石組などはないが、リズム良く打たれた飛石と、南側の石組、そして植栽のバランスが良く
続いて春・秋のみ特別公開される新座敷に併設された新庭(しんにわ)庭園。こちらは明治時代に作庭されたもので、枯山水様式の回遊式庭園となっている。
枯池には栗石が敷かれ、護岸石組は高さを抑えた大きめの石を並べている。ただ栗石の上に黒ネットを敷き、ネットが飛ばされないように石を置いているのが、やや景観を崩しているのが残念なところだ。ちなみにライトアップ設備も多数あったが、こちらはレタッチ処理で除去している。
低めの築山には三尊石。本庭園の主石であるが、植栽の合間から眺める形になってしまう。本来は回遊式庭園であるので、石橋を渡って三尊石を眺めるのだろうが、石橋より先にはいけない。
礼拝石を思わせるような巨石。
新庭東部に据えられた三尊石。中央の中尊石がそびえ建ち、その両側にある脇侍石は立石と伏石で構成されている。
枯滝石組も設けており、滝頂部には白みがかった石を用いて遠山石を立ている。その下部には、水が流れ落ちる水落石、右手に水落石より背の高い石と、左手に水落石とほぼ同じ高さの石で滝添石を構成している。また水落石の手間には三角形の岩島が置かれ、これは水を左右に分ける水分石だろう。
枯滝石組を横から撮影。右の立石が遠山石、中央が滝添え石、その左に水分石となっている。
軽快に打たれた飛石。
新座敷を望む。
長屋門から中門に向かって打たれた飛石。漆喰壁に囲まれた通路の風合いも見事である。
○ | 書院から庭園を切り取って眺める額縁庭園が楽しい。萩の中心部にありながら、それほど混雑することなく、ゆっくりと庭園観賞できる。 |
× | 特に見当たらない。 |