萬徳寺は真言宗高野山派で創建は明らかになっていないが室町時代は下らない。庭園は江戸初期(1677)に小浜藩主の命により作庭され、昭和27年(1952)に国指定名勝を受ける。また、日本紅葉の名所100選にも選定されている。
小浜市は古庭園が点在するエリアであり、そのなかでも萬徳寺は2010年に日本紅葉の名所100選に選定されたこともり、小浜市では知名度のある庭園だ。それでは方丈から額縁庭園の撮影からスタートすると、さっそくオレンジ色の毛氈(もうせん)に目を奪われる。
毛氈(もうせん)とはフェルト生地のようなカーペットで、寺院や茶室に敷かれることが多い。一般的には朱色で、希に青色がある程度。ただ、こちらではオレンジ色であり紅葉との調和を考えたものと推測する。安易に朱色を選ばないセンスに感服。
幅広の白砂敷きは山畔へと続き、正面には高さ2m以上の守護石は、「名園のみどころ(著:河原武敏)」によると蓬莱山としている。
萬徳寺では、この守護石は真言密教の本尊である大日如来を表し、脇石に阿弥陀如来など4つの仏、および多数の石組を様々な仏(諸仏)に見立てた金剛界曼荼羅の庭園となっている。(パンフレット参考)
石段上から昇天堂と庭園を眺める。
方丈からは枯山水のようにみえるが、小池のある池泉観賞式庭園であり、よく観察すると流れを設け小池に注がれている。小池やその背後にある流れは江戸中期頃によく見られ、山畔の配水を兼ねている。実用性と景観を兼ね備えた「用と景」だ。
小池には、かつて亀石組が存在していたが、昭和28年の台風被害によって埋没。
松の奥に流れがあり、2本の松の間は鶴石組とされる。おそらく松の間にある横石が鶴羽石だろうか。
借景の美しい萬徳寺庭園と茅葺き屋根の方丈の組み合わせが、古き良き日本の風景らしく美しい。
○ | 視点場の方丈を含めて全方向の景色が美しく、またオレンジ色の毛氈と紅葉の組み合わせが素晴らしい。 |
× | 白砂敷きの奥行きがあり近づいて確認できない。 |