成田氏庭園(成田家庭園)は、大石武学流の宗家5代の池田亭月(ていげつ)の代表作といわれ、昭和7年(1932)に作庭された。りんご農家の住宅庭園であり、令和2年(2020)に国指定名勝を受ける。
個人庭であるため弘前市文化財課経由で事前予約を行い訪問。庭園自体は開放されているようであるが、玄関で予約済みであることを伝えて見学。
大石武学流庭園をいくつか訪問してきたあとであれば、大石武学流の典型的な地割りとなっていることに気づくだろう。図解してみると、次のようになっている。
主屋から飛石が礼拝石と 、つくばい(手水前とも呼ぶ)に繋がっている。左側には七福神のうち2つの神に見立てた「二神石」。礼拝石の先には枯池や滝石組などを配置している。
つくばい(手水前)。一般的に蹲踞(つくばい)とは茶室に入る前に身を清めたり、茶の湯を汲むところであるが、それにしては大きすぎる。大石武学流庭園では、つくばいは実用的なものではなく、書院から人の動きをイメージしながら庭園を眺めるのである。
七福神のうち2つの神に見立てた「二神石」は、手前の石組が明らかに周辺の石と異なり、近年修復されたのだろうか。バランスが良くないのが残念。
手前の伏石が礼拝石。一般的には礼拝石に立って庭園を眺めるビューポイントであるが、大石武学流庭園では供え物を置いて、神仏礼拝するためで乗ってはいけない石である。その奥には枯池や大ぶりの守護石と深山石を据えている。
枯滝石組と枯池。やや雑草が生長しており邸宅庭園ならではの整備の難しさを感じさせる。
自然石を組み合わせた野夜灯(やどう)と呼ばれる石灯籠。野夜灯の左にある小さな石は遠山石だろうか。
飛で石列から枯滝石組まで、主屋からの観賞上の軸線を設けている。成田氏庭園周辺には徒歩5分圏内に複数の庭園があるため、巡ってみてはどうだろう。
○ | 邸宅庭園に残る貴重な大石武学流庭園を見学できる。室内からの観賞ではないため、役所経由の事前連絡制でも比較的予約が取れると思われる。 |
× | 整備がやや追いついておらず雑草が目立つ。 |