江戸時代に製鉄で財を成した豪族・櫻井家の屋敷に作られた日本庭園。大名茶人として知られる出雲松江藩の藩主・松平治郷(はるさと)の訪問にあわせて、江戸末期に日本庭園と屋敷に「上の間」を作った。松平治郷:隠居後は号(別名)の不昧(ふまい)と名乗る。2023年にはTBSドラマ「VIVANT」のロケ地にもなる。
藩主・松平治郷の訪問を歓迎するために作られた日本庭園であり、当時の権力の大きさを感じさせる。庭園は松平治郷(不昧公)により「岩浪の庭(がんろうのにわ)」と名付けられる。櫻井家は2023年で大ヒットしたTBSドラマ「VIVANT」の堺雅人さん演じる乃木憂助のふるさととしてロケ撮影も行われている。
滝上部を撮影。150坪ほどの庭園にある滝石組としては最大級だろう。水路を掘って導水しているとのこと、また岩肌の石組は組んだのではなく掘り出したものだろうか。
滝下部を撮影すると意図的に組んだ石とみられ、刈込み上部には山形の蓬莱石とみられる石を据えている。左手にある石灯籠は江戸時代末期らしく強さを感じないものだ。参考:日本庭園史の研究家・重森三玲(しげもり みれい)の調査によると、時代が古いほど強さを感じる石灯籠とのこと。
山畔から繋がる出島風の意匠になっている。モダンな庭園造りで知られる日本庭園史の研究家・重森三玲(みれい)の長男である重森完途(かんと)によると、出島と岩島は、江戸中期の池泉庭園でよく見られる亀出島と亀頭石が退化したものとのこと。(出典:茶の湯的 ・ 建築 庭園 町並み観賞録)
苔むした土橋が美しく、土橋の先には明治時代に作られた煎茶席「菊掃亭(きくそうてい)」がある。煎茶席とは、江戸中期以降に中国から持ち込まれ、抹茶に代わる新しい茶の飲み方。作法もかなり緩やかで、会話を楽しみながらお茶を楽しむスタイル。
上の間の内縁越しに「岩浪の庭(がんろうのにわ)」を眺める。
櫻井家から散策を歩いて東側へ1-2分ほど向かうと、美しい渓谷に出会う。
また渓谷を見下ろす広場には、ひときわ目立つモミジがある。木の幹まで紅葉で覆い被さっている。横から眺めれば、
なんと、このような構造になっている!
再び櫻井家に戻り門をくぐり、ふと振り返ると延段の意匠に気づく。こちらは出雲流庭園の特徴である短冊石と丸石を組み合わす飛石組手法だろか。最も顕著な例は、同じく奥出雲にある絲原家庭園を参考にして欲しい。また一般的には、このような延べ段は切石と自然石がミックスした寄せ石敷きと呼ぶ。切石のみで構成された延段を「真」、自然石のみを「草」、ミックスしたのを「行」と表現する。これは書道の「楷書(真書)」「草書」「行書」に習うものであり、写真の延段は「行の延段」と言い表せる。
○ | 雄大な滝石組に圧巻される。また周辺環境も素晴らしく渓谷まで散策したい。 |
× | 特に見当たらない。 |