成巽閣は江戸末期に加賀藩主・前田家の奥方御殿で当時は巽御殿と呼ばれた。国指定名勝の主庭「飛鶴庭」は御殿が造られた同時期に作庭、明治7年(1874)に「成巽閣」と改称された。その後、県指定名勝の中庭「万年青の縁庭園(おもとのえん ていえん)」と中庭「つくしの縁庭園」が造られた。
兼六園の園内からもアクセスできる成巽閣。3つの庭園があるが、国指定名勝の「飛鶴庭」は事前予約が必要である。まずは柱の無い縁側から眺められる「つくしの縁庭園」。縁側は20mあり、桔木(はねぎ)という構造によって軒先を支えており、角にある支えは無くても大丈夫とのこと。
つくしの縁庭園には黒松を植樹され、辰巳用水から分流された遣水(やりみず)が緩やかに流れている。
つくしの縁庭園には蹲踞(つくばい)と、互い違いに角度を変えた飛石で苑路を設けている。蹲踞(つくばい)とは茶室に向かう際に身を清めるところとして使われることが多い。
つくしの縁庭園の角。先ほども解説したが、この角にある柱はなくても、軒先は支えられる構造になっている。
続いて中庭「万年青の縁庭園(おもとのえん ていえん)」。先ほどの「つくしの縁庭園」からの遣水が繋がっており、こちらでは遣水は深くなり、緩やかだった流れは水音が響くようになっている。
そして事前予約制の「飛鶴庭」と「清香軒・清香書院」。成巽閣は建物内部は撮影できないため庭園だけを撮影。左側は漆喰打された土縁には自然石を配置。土縁と庭園は壁に挟まれているようにみえるが、戸を外すことができ、露地からの遣水が土縁に繋がる意匠になっている。これが「飛鶴庭」と「清香軒・清香書院」に一体感を生み出す見事な意匠になっている。
現在では採掘できない貴重な鞍馬石による沓脱石(くつぬぎいし)の先に六角形の手水鉢がある。
飛鶴庭は苔の平庭であり、辰巳用水から分流された曲水が流れ、土縁へシームレスに繋がっていく。
清香書院から飛鶴庭を額縁庭園で撮影。
兼六園の園内から成巽閣に繋がる赤門を潜ると、飛鶴庭の一部が見られる。ここまでの敷地は兼六園の料金内で楽しめる。飛鶴庭と「清香軒・清香書院」を仕切る戸は、残念ながら通常は写真のような状態で全開になっていない。
そこで、公式サイトより前開になった写真を引用させていただく。これが真の美しい姿であり、実物を見たかった。
望遠レンズで土縁を撮影。漆喰で造られた沓脱石に赤石や青石を貼り付けた風流な意匠だ。
兼六園の内部から成巽閣へ繋がる赤門。その先に飛鶴庭がチラ見できる。
○ | 事前予約制の飛鶴庭がハイライト。辰巳用水から分流された曲水が流れ、土縁へとシームレスに繋がっていく様子が美しい。 |
× | 事前予約がなく飛鶴庭が見られない場合は、庭園としては見どころが少ない。 |