鈴木屋敷は、熊野古道沿いにある数多ある神社のひとつである藤白神社の境内にある。藤白神社の神主であった藤白鈴木の邸宅であり、屋敷を構えたのは平安時代末期(1150年頃)とされる。またこの地は「鈴木」姓発祥の地とされている。2015年に藤白神社や鈴木屋敷が国指定史跡に登録されたことを受け、復元工事が行われ、令和5年(2023)に修復が完成する。屋敷内の日本庭園「曲水泉」は室町時代に作庭されたと伝わる。
表門からの青石による飛石が美しい鈴木屋敷からは、2023年4月に修復が完了した「曲水泉(きょくすいせん)」を見学できる。ただ、庭園内には立ち入れず書院からの鑑賞となる。
曲水と聞けば、庭園好きであれば思い出すのが「曲水の宴」である。これは平安時代の貴族が杯が自分の目の前までに流れてくるまでに詩歌を作って詠み、盃の酒を飲んで次へ流すという遊びであり、そのような庭を「曲水庭園」と呼ぶ。ただ、作庭時期は室町時代といわれ、「曲水の宴」は平安時代の風習であることから、複雑に湾曲した様子から「曲水泉」と名付けたのであろうか。
池泉には中島を設けているが、中島を護岸石組で囲むのではなく、洲浜調にしているのが特徴的である。近しい類似例としては、江戸時代に作庭された「鶴川香山園(東京都町田市)」が挙げられる。
石橋の手前にも小さな洲浜を設けている。
手前側にも洲浜を設け、護岸石組も様々な石を用いて美しく仕上げている。
庭園に立ち入れないため、池泉の形状や洲浜の詳細が分かりにくいため、修復工事のパネル展示の写真を掲載しておく。
中島の奥には巨石による岩島がある。
書院からの額縁庭園。紅葉シーズンの日曜日であるため、3組ほどの見学者がいたが、混雑することはなく額縁庭園を撮影できた。
苑路を設けた池泉回遊式庭園であるため、いつの日か庭園内を廻遊して洲浜の意匠などを観察したい。
鈴木屋敷の案内図(パンフレットより引用) [ 案内図を拡大する ]
○ | 整備されたばかりということもあり、植栽や芝の状態も良い。額縁庭園を楽しめるのも良い。 |
× | 書院からの見学のみとなるため、洲浜などを池泉護岸の様子を目視できない。 |