臨済宗東福寺派の大本山である東福寺は、鎌倉時代(1236年)に創建。京都五山の第4位に数えられる。本坊庭園はモダンな庭園造りで知られる日本庭園史の研究家・重森三玲(しげもりみれい)によって昭和14年(1939)に完成。京都五山:別格-南禅寺、1位-天龍寺、2位-相国寺、3位-建仁寺、4位-東福寺、5位-万寿寺
本坊庭園(八相の庭)は、東西南北に4つの庭園をもつ。写真の南庭には蓬莱、方丈、瀛洲(えいしゅう)、壺梁(こりょう)と仙人の住む島となる四仙島を表現した石組が配置され、重森三玲庭園美術館でも四仙島を表現した石組がみられる。南庭奥にみえる苔の築山は5つあり、京都五山(由来を参照)をイメージしている。
奥から順に瀛洲(えいしゅう)、蓬莱、壺梁(こりょう)、方丈と四仙島を全て望む。奥の瀛洲、蓬莱、壺梁は三神仙島と呼ばれる。6mを越える長い石を、立石とのバランスを取ることで躍動感ある石組になっている。庭園研究家の三玲が全国の庭園を計測したときにはこのような意匠はなく、三玲の生み出した新しい石組手法である。写真では分かりやすいように三神仙島に赤ラインを引いています。
三神仙島のうち瀛洲(えいしゅう)、蓬莱をクローズアップ。躍動感溢れますね。また、こちらの砂紋はパンフレットに記載されている砂紋とは模様が異なります。それもそのはず、取材1週間前にJR東海の企画で、重森三玲の孫にあたる千靑(ちさを)さんが、三玲が当初描いた青海波(せいがいは)崩しを再現したイベントが行われました。その波紋がまだ残っていたのを偶然みることができ、なんとも嬉しいタイミング!
三神仙島のうち壺梁(こりょう)をクローズアップ。大海を飛び跳ねるトビウオのようにも見えませんか?
方丈をクローズアップ。ちなみに、こちらの渦巻く砂紋によって「八海」を表している。
別角度から南庭を眺める。石組は角度によって見え方が変わるのも愉しみ方のひとつであるが、眺める角度によってこれほど表情をかえる石組も珍しい。
京都五山をイメージした築山から眺める。
続いて西庭に向かう。葛石(かずらいし)でサツキを市松模様(マス目模様)に区切った意匠であり、井の字に等分した中国の田制「井田」にちなみ「井田市松」と呼ばれる。葛石:社寺などの建物の縁にある細長い石。
そして、東福寺庭園のシンボルでもある北庭。モダンな庭園造りで知られた三玲の代表作といっても過言ではない。西庭同様に市松模様に苔と敷石が配置されている。
縁側から遠くにいくに従って、まばらになっていくのが特徴である。
苔が盛り上がっているところもあり、これにより奥行き感と立体感の双方が生まれている。
続いて東庭へ。円柱の石で北斗七星を構成したに見立てている。円柱は東司(とうす)の柱石の余石が使われている。東司:寺院のトイレ。
これでぐるっと庭園を巡ったことになる。南庭の「瀛洲(えいしゅう)、蓬莱、壺梁(こりょう)、方丈、八海、五山」、西庭の「井田市松」、東庭の「北斗七星」の八つを、生涯における八つの主要な出来事「八相成道(はっそうじょうどう)」にちなんで「八相の庭」と名付けられた。北庭が含まれていないのは不思議であるが、実に面白い名前の由来だ。
○ | 重森三玲の代表作でもある名園であり、一度に4種類の庭園を眺められる。北庭のモダンな庭が有名であるが、ハイライトは南庭の石組だろう。三玲が生み出した長細い巨石の組み方に注目したい。 |
× | 北庭の市松模様の苔が所々、剥がれている。 |