瑜伽山園地とは、浮見堂の南側のエリアのことである。このエリアに明治から大正にかけて大阪財界で活躍した山口吉郎兵衛の別荘があった。平成31年(2019)に復元整備に着手し、令和2年(2020)に瑜伽山園地「旧山口氏南都別邸庭園」として一般公開。同敷地には高級ホテル「ふふ奈良」も同時期に完成。
誇大な敷地の奈良公園。東大寺南大門や春日大社へ向かう人は多いが、浮見堂のあるエリアまで足を運ぶ人は少ない。この浮見堂に隣接したエリアに、2020年5月末に「旧山口氏南都別邸庭園」が一般公開された。モダンな雰囲気を感じさせる日本庭園で、復元整備された直後に訪問していることもあり真新しい。
入口近くは平地で枯山水を造っている。洋風庭園と日本庭園が重なるデザインで美しい。
枯流れには石橋を架けている。枯流れの西側(左)が苔地であるが、東側は土のままだ。こちらも苔地にすれば、より魅力が増すと思う。
庭園中央部へ移動。斜面を利用した枯滝石組が見つかる。ここから、先ほどの枯流れと繋がる地割りである。
枯滝石組に近づいて撮影。平地の枯山水は近代庭園だが、こちらは大振りな感じはあるが歴史を感じる。明治時代に造られたものを忠実に復元したのだろう。
こちらにも小さいながらも枯滝石組がある。分かりやすいように写真に青マーカーを引いている。
庭園東部には池泉があり、真新しい木橋を架けている。
事前予約制の数寄屋造りの茶室。建築物は新しいが、手水鉢や灯籠などは明治時代のものと思われ趣がある。
トイレのような建物。扉を開けてみると、、、
トイレである。傍には茶室の近くにあり、雪隠(せっちん)と呼ばれる。内露地にあるものを砂雪隠と呼び観賞用、外露地にあるものを下腹雪隠と呼び、緊急用のトイレとなっている。本庭園では露地門がないが、これは造形的に砂雪隠だろう。露地とは、茶室に付随する庭園であり、茶室に近い順に内露地、外露地と分かれていることが多い。
交流・飲食施設「滴翠」が2020年6月5日にオープン。瑜伽山園地には、世界的建築家「隈研吾」がデザインしたリゾートホテル「ふふ奈良」が、同時期にオープンしており、そのレストランにとしても使われる施設だ。1泊2食 2名1部屋で合計7~17万円の奈良県最高峰のプライスである。こういったホテルで連泊してゆっくりとした時の流れを感じたいものだ。
平成3年から3年掛けて改修した八角堂形式(六角形)の浮見堂。
奈良公園でも静かなエリアであり、浮見堂と旧山口氏南都別邸庭園を眺めるだけに足を伸ばす価値あるエリアだと思う。
瑜伽山園地「旧山口氏南都別邸庭園」 案内図 (パンフレットより引用) [ 案内図を拡大する ]
○ | 和モダンな平地の枯山水が美しい。またホテルと接続していることから、22時まで利用できるのも嬉しい。ライトアップされた庭園も愉しみたい。 |
× | 山側は木々に囲まれた苑路があるだけで、庭園の要素が少ないのが残念である。 |