安楽寺は平安時代に、現在地より東に1km離れたところで、法然の弟子、住蓮と安楽によって開基されたと伝わる。室町時代に現在地に本堂が建築された、庭園は住職に確認すると江戸時代に作庭されたとのこと。春、夏、秋の特定日だけ特別公開されている。また「鹿ケ谷カボチャを食べれば中風(いわゆる風邪など)にならない」ということから、毎年7月25日に鹿ケ谷カボチャ供養が行われ、この日も庭園が特別公開されている。
サツキの美しいことでも知られる安楽寺は、桜、ツツジ、サツキと紅葉時期などに特別公開されている。私は紅葉シーズンに訪問したが、混雑しておらず、ゆっくりと書院から庭園を鑑賞できた。
庭園は数ヶ所に分かれており、こちらがツツジ、サツキが美しい庭園になっている。基本的には刈込みと飛石だけのシンプルなもので、庭園好きとしては、やや物足らなさを感じた。
続いて中庭へ。右奥が先ほど鑑賞していた書院であり、その東側に中庭を設けている。
先ほどの庭園よりも、私は中庭に興味を惹いた。僅かな野筋をもつ苔庭であるが、枯流れを設けているではないか。ありそうで、あまりお目にかからない意匠。
中庭は廊下で廻遊できる。周辺が建物に囲まれ、苔庭の樹木などにより、苔への直射日光を減らし苔焼けを防いでいる。
サインカカーブのように枯流れを設けている。類似しているとまでいわないが、重森三玲の6作目である春日大社「稲妻形 遣水の庭」を思い出してしまう。
先ほどの苔には、実は渡り廊下を経由して広がっている。さきほど紹介した中庭は左手にあり、続いて正面の空間に移動してみると、
このようになっている。写真左手が先ほどの渡り廊下で、廊下下部で枯流れが続いているのがわかるだろうか。
そして、こちらの中にもサインカカーブのように枯流れを設けている。
2010年に完成した客殿「椛 momiji」は、特別公開日を中心にカフェスペースとして開放されている。窓の奥が、一つ前の写真にある中庭となる。
続いて山門と本堂の間にある庭園を撮影。
安楽寺は石よりも植栽が主役としているためにか、巨石も目立たないように配置している。
中庭にある花手水(はなちょうず)。SNSで拡散されるようになった令和頃から、あちこちのお寺で見かけるようになった。
山門を望む。その右手が受付であるが、この美しい光景を眺められるように、受付に衝立を設置しているように感じる。だとしたら、見事な配慮だと思う。
○ | 苔の中庭に設けた枯流れは、石を使わない希有な意匠だが美しい。また渡り廊下を越えて広がりを見せているのも良い。 |
× | 特に見当たらない。 |