恵林寺は、1330年に伊勢国出身の臨済宗・ 夢窓疎石(むそう そせき)によって開基された古刹。戦国時代に武田信玄によって再興された。庭園は夢窓疎石の作庭と伝承されるが、築庭した記録は存在していない。書籍や著名なサイトによると、鎌倉時代に残る庭園が桃山から江戸初期に改修され現在の形になったと掲載されている。昭和19年(1944)に国指定名勝に登録。
武田信玄ゆかりの寺院である恵林寺は、日本初の作庭家ともいわれる夢窓 疎石(むそう そせき)に縁の池泉庭園がある。滝石組、中島、出島が直線上に配置されるのは鎌倉時代の特色で、地割りは当初のものからと推測できる。
中島の護岸石組は丸みを帯びた弱いもので、鎌倉時代のものとは思えない。また中島を亀島とみるならば、滝石組のある築山が鶴石組とも推測でき、鶴亀向かい合う趣向ともいえる。
北西部の築山を焦点距離95mm(35mm換算)で撮影。滝石組は三段落としとなっており、勢いのある滝添石で組まれている。築山には三重石塔を据え、右手には須弥山石組が造られている。須弥山とは、古代インドの宇宙観に世界の中心にそびえ立つ山であり、浜松市の大福寺でなどで見られる。
須弥山石組と滝石組。
枝垂れ桜と池泉庭園を撮影したかったが、2021年は開花が早く4月3日時点で散り始めになっていた。
池泉庭園東部を撮影。右手に小滝があり池泉の形状が複雑になっているのが良い。
出島から切石橋を越え、池泉を回遊できるように飛石が続くが、立ち入りはできない。本堂から滝石組が遠いため、肉眼では詳細を確認できず、また中島で視界が遮られ沢渡り石が見られなのが残念。
池泉に架かる亭橋。涼を感じつつ、庭園を観賞できる渡橋である。
方丈前庭には力強い松を中心に配置した枯山水であり、奥には天皇の意思を直接に伝えるために派遣される使いが通る勅使門(ちょくしもん)が造られている。方丈庭園:方丈とは住職の居間
陰影が織りなす額縁庭園。黒塗りの座卓に新緑がわずかに映り込んでいる。
先ほど居間の隣接した大広間。スリット越しに眺める新緑が面白い。
最後に額縁庭園を撮影した居間の反対側から一枚撮影。
朱色の四脚門の先に、無料で散策できる庭園もあり亀島らしき中島がある。なお、本時期は2017年10月と2021年4月に訪問しており、時期の異なる写真を掲載している。
○ | 滝石組、中島、出島が直線に並ぶ鎌倉時代の地割りであり、夢窓疎石の縁の庭園であることを感じさせてくれる。 |
× | 庭園の見どころとなる滝石組が観賞点より遠いため、造形が分かりにくい。 |