不動院は平安時代(906)に済高(さいこう)大僧正が開基した寺院である。不動院は宿坊を兼ねており、境内には モダンな庭園造りで知られる日本庭園史の研究家・重森三玲(しげもり みれい)によって昭和に作庭された「吉仙庭」が残されている。電話予約により庭園見学ができる。
電話で事前予約することで庭園見学が学を受け付けてくれた不動院。宿坊が忙しくなさそうなチェックアウトとチェックイン前の時間帯を希望して見学させていただく。
「吉仙庭」は境内の斜面を活かした集団石組による枯山水となっている。これまでに40以上の重森三玲による庭園を見学してきたが、このような意匠は初めてみるもので、重森三玲の作品であるか疑問であったが、不動院の公式サイトに記載されているのだから、間違いないのだろう。
苑路となる石段は、枯滝石組を兼ねたものだろうか。そして頂き部には遠山石と思わしき立石を配している。
集団石組の前面には間隔を明けて巨石を置いているのが印象的。和歌山県紀の川市にある国指定名勝「粉河寺庭園」にやや類似しているような枯山水だ。
庭園東部には池泉を設け、三尊石のように池中立石を配している。ただ池泉が矩形に切り取られ、やや不自然であることから重森三玲によるものではなく、後に改修されたものだと推測する。
右手の石段を登っていくと、半露天風呂付き特別室がある離れへ続いている。
石段の途中から吉仙庭の上段エリアを垣間見られる。どうやらV字型の枯流れを設けているようだ。
枯流れは青石を用いた豪華なもので、石橋も渡している。
半露天風呂付き特別室前の廊下からは吉仙庭の最上部が見えるが、おそらくここで見えている庭園は、作風が違うため重森三玲によるものではないだろう。
不動院の入口にある池泉庭園。こちらは事前予約することなく見学できる領域にある。出島を設けた池泉庭園で、コンパクトながら石組が美しい。庭園写真家・中田勝康氏によれば、こちらは吉仙庭を作庭した昭和30年に既存庭園の護岸改修を重森三玲が行ったとのこと。
○ | 集団石組のような意匠で迫りくる枯山水は迫力があり、全貌を直接確認できずとも、階段などからその姿を垣間見られて興味深い。 |
× | 特に見当たらない。 |