臨済宗 大本山東福寺派の塔頭寺院である一華院。室町時代(1382年)に創建。本堂南庭には「依稀松の庭(いきまつのにわ)」が作られ、北庭にはモダンな庭園造りで知られる日本庭園史の研究家・重森三玲(しげもり みれい)のお孫さんである千靑(ちさを)氏による「彷彿石庭(ほうふつせきてい)」が2016年に公開された。
秋のみ特別公開される一華院。室町時代に作庭された南庭と、平成に作庭された北庭と西庭を愉しめる。まずは書院から南庭「依稀松の庭(いきまつのにわ)」の額縁庭園を撮影。
見事な枝振り松を配した「依稀松の庭(いきまつのにわ)」。苔庭の奥にはツツジの大刈込みが作られ、雄大でまるで雲を表現しているかのよう。
依稀松のそばには蹲居(つくばい)が作られている。蹲居は、隣接する茶室へ向かう際など、身を清めるため造られることが多い。詳しくは清水園(新潟県新発田市)の記事を参照して欲しい。
大刈込みの麓に、とても低い位置に架けられた切石の石橋がみつかる。
北庭「彷彿石庭(ほうふつせきてい)」を眺める。重森千靑(ちさを)氏による作庭で2016年に公開された。
四列の島で構成された枯山水。最奥の2島は不老不死の仙人が住むとされる蓬莱島、中間の2島は鶴島と亀島を表現、手前の1島は3石で亀を表現。(説明は後述)
このように「彷彿石庭」を眺める腰掛けスペースが設けられている。
中央の2つの苔島は、中央の3石は、中央は鶴首石、両サイドで羽石を見立て、全体として鶴石組を構成している。その両側の2石づつは、それぞれ亀を見立てている。手前の1つの島は、亀を表現しており、左が亀頭石、中央が亀甲石、右が亀尾石で、東から西に向かって泳いでいる姿を表現。そして、石は全部で15石で、奥に5石、中央で7石、手前に3石と縁起の良い数字で「七五三の石組」となっている。
「彷彿石庭」の西側をズーム。苔島の右3石が鶴石組である。
「彷彿石庭」の東側をズーム。右奥の3石で蓬莱島を表現している。島ごとに築山の素材が異なり、さらに奥に向かって敷地が盛り上げ奥行きを表現している。
西庭に移動する。解説がないため作庭意図は不明であるが、亀石組ではないだろうか。
白石と肌色の石が交互に組まれている。多くの参拝者は「依稀松の庭」を眺めて帰り、北庭や西庭に気づいていないようだ。実にもったいない・・・
○ | 室町時代と平成の時代を超えた庭園が同居している。特に重森千靑氏の「彷彿石庭」は、「三五七の石組」を新たな意匠で表現しており、いつまでも眺めていたくなる庭園だ。また紅葉シーズンでも混雑感がなく穴場である。 |
× | 特に見あたらない。 |