臨済宗建長寺派の吉祥寺は、室町初期(1339)に創建。建長寺派寺院のなかで最北に位置するため、建長寺の北の門とされる。本堂を取り囲むように造られた庭園は昭和に作庭されている。
江戸後期に再建された山門を抜けて、江戸初期に再建された本堂へ。山門は2階にも上がれるようになっていた。本堂前には臥龍庭(がりゅうてい)と呼ばれる枯山水が造られている。
やや褐色の砂で大海を表現して、2つの横長の苔の中島を造っている。長方形の敷地であるが、曲線を多用した苔庭により単調に見えない美しさを演出。大海には舟石らしき岩島もみられる。
奥の小屋は釈迦堂となっている。苔庭には巨石を据え、どっしりとした力強さを感じる。
臥龍庭の南西部には三尊石の石組が見られる。本庭園は庭園に明暗が生まれない曇り空や雨天のほうが庭園が美しくみえる。
太陽光があると、このような明暗が生まれてしまう。実際の写真は暗部は闇になってしまうが、Adobe Lightroomのレタッチ処理にて暗部を明るくなるように処理している。このような処理を行うためには、一眼レフやミラーレス機に搭載されたRAWモードで撮影する必要がある。
臥龍庭とは龍が横たわった姿に見立てた枯山水である。住職の説明によると、こちらの3石が並んだ中島が龍の背中となっているとのこと。つまり大海に龍が半分以上潜っている姿なのである。
先ほどの龍が登っていく様子を表したのが、本堂西側の「昇龍の滝」であり、2つの庭をまたがって表現しているのである。(赤線のように龍が登っていく。)
昇龍の滝には水が流れているが、植栽の成長により、その姿を感じ取りにくいのが残念である。ただパンフレットには、作庭当時の様子が掲載されている。本記事の最後にもパンフレットを掲載しているので確認してみよう。
本堂裏には「青龍の滝」がある池泉庭園となっている。
こちらが青龍の滝であり、池泉に設けられた岩島の配置が絶妙である。画面中央の滝の右奥にも同様の滝があるが、木々の生長により、その姿をあまり確認できない。こちらもパンフレットに本来の姿が載っているので見て欲しいが、残念でならない。
青龍の滝を正面から撮影。右手前には池中立石。池中立石とは、池泉に建てられた特に高い石のことであり、その代表格は平泉の毛越寺が挙げられる。
本堂から、青龍の滝を撮影するとハート型の額縁庭園を撮影できる。インスタ映えしそうな撮影スポットだ。
本堂では抹茶も頂けるようになっている。また境内には冬季以外、様々なお花が楽しめることから「花寺の吉祥寺」とも呼ばれる。近くには道の駅「田園プラザ」があり、合わせて立ち寄りたい川場村の代表的な観光スポットだろう。
吉祥寺の案内図(パンフレットより引用) [ 案内図を拡大する ]
○ | 青龍の滝周辺の岩島が美しい。肉眼では少々見えにくい距離のため、望遠レンズをもって撮影してみると良いだろう。また、臥龍庭の枯山水も洗練された美しさだ。 |
× | 昇龍の滝、青龍の滝の植栽が放置気味であり、本来の美しさが半減している。 |