室町時代に京都北山に開創、江戸初期に現在地へ移転。国指定特別名勝の庭園「鶴亀の庭」は、徳川家康の相談役であった以心崇伝(いしんすうでん)が、幕府の茶人としても知られる庭園デザイナーであった小堀遠州に依頼して作らせる。ただ作庭当初は、遠州の指示のもと弟子の村瀬佐介や、石組みの名人・賢庭(けんてい)を中心に作庭されたといわれる。(出展:日本の10大庭園 著:重森千靑)
重要文化財の方丈から特別名勝「鶴亀の庭」を望む。金地院は庭園書籍に必ずといっていいほど紹介される鶴亀蓬莱庭園の代表格である。ただ、広大な白砂で石組みに近づけないため、事前知識がないと庭園の魅力を感じとりにくいだろう。
それでは図解。蓬莱石組を中心に左右に鶴島と亀島を配置。背後には刈り込んだ植栽による「大刈込」がみられる。江戸初期から見られるようになった「大刈込」の技法では、山や雲や波を表現することが多い。金地院の大刈込では、深山幽谷(しんざんゆうこく)を表現している。深山幽谷:人が訪れないような奥深い自然の地
蓬莱石組と礼拝石(らいはいせき)を撮影。礼拝石は庭園のビューポイントであることが多いが、金地院では、文字通り祈りを行う場所である。祈りの対象は「鶴亀の庭」の裏手にある徳川家康を祀る東照宮となる。また礼拝石を挟んで奥は白砂ではなく栗石が敷き詰められている。
蓬莱石組を解説。「日本の10大庭園 著:重森千靑」によると、背の高い立石(★)が遠山を抽象的に表現した遠山石(えんざんせき)である。そして手前の三石(▲)が三尊石組となる。肉眼では確認しづらいため、撮影した写真を拡大してみよう。また、「鶴亀の庭」は南向きであるため逆光になりがち。敢えて曇空や雨天に訪れるのをお薦めしたい。
鶴島を詳しくみてみよう。「鶴亀の庭」で最も特徴的な石が、横に寝かせた巨石の鶴首石(かくしゅせき)だ。(鶴首岩とも呼ぶ)そして、2番目に大きな石により羽石を表現。築山に石を組むことで立体感を強調させており力強い。
続いて亀島に視点を移す。こちらも鶴島と同様に築山に石を組み亀島を表現。特に築山に植えられたヒノキ科の真柏(しんぱく)が趣ある。幹が朽ち果て白骨化した舎利(しゃり)となり、まるで盆栽のようだ。作庭当初からこのような姿だったといわれている。
亀頭石をクローズアップ。いまにも動きそうな見事な石である。
前庭となる白砂には、大曲の飛石が打たれている。
ひとつ置きに向きが変えられており、江戸時代初期としてはかなり先進的なモダンな意匠である。
○ | 鶴島、亀島の造形が力強く見応えがある。また写真撮影できないが、小堀遠州の茶室「八ツ窓の茶席」も別料金で見学できるので見ておきたい。なお通常時期は予約が必要であるが、紅葉時期などは予約なしで見学可。 |
× | 石組に近づくことができず、双眼鏡や写真を拡大して眺めないと石組の素晴らしさを感じとりにくい。 |