旧邸御室は昭和12年に建築された数寄屋造りの邸宅。2018年「京の夏の旅」にてテーブルに庭園が映り込む様子を「鏡庭」と名付けられ、多くの観光客が訪れた邸宅庭園である。なお公開は不定期である。
他の「床もみじ」同様に「床」ではなくテーブルに反射しているのである。こちらは花梨(カリン)の机である。
数寄屋造りの邸宅に、ひときわ立派な鞍馬石による沓脱石と飛石を配している。鞍馬石は現在では産出不可となっている貴重な石である。数寄屋造り(すきやづくり)について少し説明を。数寄とは「好き」からきており、形にとらわれず自由に造られた建築。身分ある武士の邸宅に造られた格式ある書院造りに対して、シンプルさを追求したものが数寄屋造りである。数寄屋造りが生まれたのは、千利休による茶室が生み出された安土桃山時代である。
飛石の先にある丸い鞍馬石が、庭園のビューポイントとなる礼拝石(らいはいせき)になるのだろうか。
双ヶ丘(ならびがおか)を借景とした植栽豊かな庭園。枯池を造っていることより本記事では枯山水に分類。ちなみに、双ヶ丘には展望広場があり双ヶ丘からの夜景も楽しめる。登り口はこちらではなく、常時開放された山道があり、徒歩10分ほどで山頂を目指せる。
枯池には何段にも石を重ねた護岸石組で出島を造っている。
枯池には岩島や中島を配している。
枯池の西部を望む。植栽が多く石組を正面から観賞しにくい。
築山を登っていくと、登録有形文化財の茶室「双庵」がある。
その隣には、茶室の入室待ちを行う腰掛待合(こしかけまちあい)がある。パンフレットでは「茶室待合」と表示している。
腰掛待合の足下が面白い。斜面に向かって枯流れを造り、交差するように沢飛石を渡した風流なものである。
最後の大広間の隠れた撮影ポイントを紹介。それは欄間(らんま)の富士山だ。写真上部に富士山が彫られているのがわかるだろうか。この富士山と庭園と床モミジの3つを同時に移し込むのがポイントであると案内人に教わった。なるほど、これは面白い。
○ | 床もみじと欄間(らんま)の富士山を同時に撮影できる。また、枯流れと沢飛石を組み合わせた腰掛待合の意匠が優れている。 |
× | 植栽が多く石組が観賞しにくい。 |