皆美館は明治21年(1888)に「旅籠皆美」として開業。皇族をはじめ、芥川龍之介、川端康成、志賀直哉などの多くの文人墨客が宿泊した由緒ある旅館。庭園はアメリカの雑誌「ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング」にて毎年上位にランキングされている。
しおさいプロジェクトにて毎年上位にランキングされている皆美館。しおさいプロジェクトでは、旅館、レストラン、美術館に付属する庭園に重点を置いているため、比較的このような庭園がランクインしている。そのなかで皆美館は宿泊者以外も事前連絡により庭園見学を受け入れているため、今回取材いただき大変有り難かった。
ちなみに朝訪問したときは大雨のなか撮影。昼前に雨が止んだため再取材いただくことに。借景に宍道湖を望む枯山水である。開業当時からの庭園であり、当時は宍道湖大橋やビルもなく、正しく宍道湖を見事に取り入れた枯山水であり、その当時の写真は日本商工会議所のサイトで拝見できる。
本庭園は州浜模様の苔と延段や飛石の扱いにセンスを感じる。こちらの蹲踞(つくばい)は立手水鉢を組み合わせたものである。蹲踞とは茶室への入室前に手を清めるためのもので、手水鉢のまえに前石を置き、両サイドに手燭石(灯りを置く石)と湯桶石の4つの役石で構成される。そしてこちらの手水鉢は立ったまま利用できる立手水鉢になっている。
本庭園の主役は15本の松であり、特にこちらの3本の松は親子松と呼ばれる。中央の黒松を男船、右の赤松を妻船、左の黒松を子船に見立て、仲良く寄り添う親子の幸福な姿を表現している。
離れの「瓢庵(ひょうあん)」に隣接した空間。竿上部が膨らんだ形から織部灯籠だろうか。ちょうど離れに宿泊のお客様がチェックアウトされたタイミングであったため見学。
正面から確認すると、やはり織部灯籠である。織部灯籠とは古田織部によって考案された灯籠でキリシタン灯籠とも呼ばれる。
竿の部分にキリスト像が彫られ、江戸時代初期にキリスト教禁止令のなか密かに信仰を続けていた隠れキリシタンの信仰物いわれる。
州浜模様の苔島に、大胆に切石による延段を設けているのが良い。
こちらも切石による延段であるが、直線ながらも2段階に曲がっているのが良い。
庭園と旅館を結ぶ入口。宍道湖を借景とした枯山水を楽しむのであれば、ガーデン・レイクビュースイートの客室に宿泊して鑑賞するのが一番だろう。次回訪問したときには、宿泊してみたいと感じた温泉旅館である。
○ | 松を主体とした白砂青松であり、3本の松で親子船を見立てられており、松を鶴亀ではなく人間に見立てるのは興味深い。 |
× | 特に見当たらない。 |