日本三大稲荷の豊川稲荷。正式の寺号は妙厳寺(みょうごんじ)であり、室町時代に創建された。江戸時代に作庭された庭園は、昭和16年に国指定名勝を受けるが、現在は理由不明だが登録されていない。
きつね千体のある豊川稲荷には、江戸時代に作庭された池泉庭園がある。毎年正月には多くの参拝客が訪れるのにも関わらず、庭園の存在を知られてないのは、公式サイトや現地に拝見する手順が公開されていないからだろう。本記事では庭園の見学方法も合わせて説明していきます。
左の建物が鎮守として祀られる吒枳尼天(だきにてん)が置かれた本殿。その参道の右手に五重の塔があるエリアが妙厳寺庭園の一部であり、滝石組が作られている。
滝石組から流された水流は、石橋と内廊下をくぐり池泉へと流れ込む。一般的には、ここまでしか庭園を眺めることができず、かつての国指定名勝でありながら、その存在が認知されないのです。
私も訪問時に拝観方法が分からず、少し離れた売店のおばちゃんに尋ねてみると、「祈祷受付で千手観音を拝観したいことを申し出ると、その途中で見学できる」ことを教えてもらう。その受付は、かつての法堂である祈祷殿にあり、写真の赤丸のところで申し込む。すると赤札を渡され、ご祈祷入口と立て看板のある入口へ向かおう。拝観は無料である。
祈祷殿で札を渡すと、2階へ上がって下さいとの案内を受ける。こちらには千手観世音菩薩が安置した座敷があり、こちらでまずはお参り。
参拝後、同じ2階にある外デッキに出てみる。デッキを歩ける履き物も用意されていた。
2階から妙厳寺庭園を見下ろすと、内廊下の奥に記事最初に掲載した五重の塔があり、ここから流れが繋がっていることがよく分かる。あくまで推測であるが、国指定名勝を受けた当初は内廊下がなく、その後、内廊下の造築により登録区域の景観が変わったことにより解除になったのではないだろうか。
園内には3つの築山が作られ、築山の間には枯滝石組が作られている。滝上段には水が岩肌を伝い落ちる「水落石」にも、蓬莱石にも見える立石がある。そして、滝下には水を左右に分ける「水分石」がある。
池泉南部の出島から築山へと繋がり、山肌は集団石組となっている。
1階に降りて廊下から池泉を眺める。
茶室のような建物から岩島で作られた出島があり、蘇鉄を植樹し、石を勢いよく斜めに立てることで荒々しい磯場に見立てた荒磯(ありそ)にもみえる。荒磯の著名な例では平泉の毛越寺が挙げられる。
2階から撮影した枯滝石組を1階から撮影。蘇鉄の生長などで枯滝石組の造形が見えにくくなっている。
池泉南部には巨石による護岸石組で囲まれた出島がある。
3つの築山で構成され、右手の築山は蘇鉄、中央と左手は刈込みとなっている。借景となる木々もあり、築山のシルエットが隠れてしまい、あまりにも築山における植栽が多すぎると感じる。
○ | 3つの築山が連なる構成が珍しく、また池泉の両側に巨石による出島が作られることでメリハリをつけている。 |
× | 築山の植栽が多すぎ、3連の築山の存在を弱めている。 |