那谷寺は奈良時代初期(717)に泰澄法師(たいちょうほうし)が創建した伝えられる高野山真言宗の別格本山である。巨大な岩山に多くの洞窟が空けられた奇岩遊仙境が有名で国指定名勝に登録されている。山門付近には庫裏庭園と琉美園があり、本記事では国指定名勝庭園である庫裏庭園を紹介。庫裏庭園は、加賀藩3代藩主・前田利常(としつね)が本殿、書院、庭園などを造らせた。庭園は徳川家康に仕えた大名でもあり茶人としても知られる庭園デザイナー・小堀遠州のもと、加賀藩の作庭奉行・分部卜斉(わけべぼくさい)によるものである。
那谷寺の特別拝観エリアには、国指定名勝の庫裏庭園と、足立美術館の庭園を作庭したことで知られる中根金作による琉美園(りゅうびえん)がある。本記事では国指定名勝の庫裏庭園について紹介する。まずは国指定の重要文化財である書院に入室。この書院は加賀藩3代藩主・前田利常が那谷寺の再建指揮の拠点として武家書院造りとして江戸初期(1635)に建立。
庭園は書院北側、庫裏の東側に面しており、飛石本位の枯山水になっている。
飛石本位の庭に三尊石を配置するのは、江戸時代初期の好みとされているようで、やや分かりにくいがシイの巨木付近に三尊石がある。
飛石は池泉に向かって伸びていき、その途中に別の三尊石と灯篭がある。
三尊石の手前には低い台座石を配している。
自然石を組み合わせた石灯籠は、津軽地方にみられる大石武学流庭園の野夜灯(やどう)に類似している。大石武学流庭園の代表格は国指定名勝の盛美園(青森県平川市)が挙げられる。
書院越しに庫裏を撮影。庫裏の奥には茶室「如是庵(にょぜあん)」があるが、庭園に立ち入れないため、外観を確認することはできない。
唯一確認できるのが、茶室近くにもうけられた蹲踞(つくばい)だけである。
○ | 金沢城や小松城の作庭にも携わった加賀藩の作庭奉行・分部卜斉(わけべぼくさい)による枯山水を、那谷寺のなかでも比較的落ち着いた環境で、座ってのんびりと観賞できる。 |
× | 石組も少なく、古庭園としての要素が少ないため、石川県最古であるものの国指定名勝庭園としてはもの足らない。 |