明治から昭和初期にかけて、新潟の三大財閥のひとつに数えられる豪商・四代齋藤喜十郎の別宅。大正7年(1918)に建築され、平成21年(2009)に新潟市が公有化。平成25年(2013)に国指定名勝となり、平成24年(2012)に一般公開される。庭園は、渋沢栄一邸の庭園を手掛けた松本幾次郎と弟の松本亀吉によるもの。
新潟市内の庭園として北方文化博物館、北方文化博物館 新潟分館と並ぶ名園で、いずれも財閥や豪農といった邸宅庭園である。本庭園は、庭屋一如研究会 主宰・藤井哲郎さんに案内いただきました。
まずは全体像を把握するため二階大広間から池泉を見下ろす。斜面を活かした地形に松やモミジを植えた池泉回遊式庭園となっている。
巨石によって中島が造られた豪壮な石組である。
二階大広間の雰囲気。モミジが多いため紅葉時期には色鮮やかに染まり、ライトアップイベントも開催されている。
一階の大広間に戻り中島を撮影。石表面の風合いが良く存在感を出している。ただ、庭園全体がモミジなどで囲まれているため、巨石周辺の松は無いほうが、石組の魅力を更に引き出せるだろう。
庭園は散策できるため、受付を一度出て園内を歩いてみる。石橋を渡り東屋「田舎屋」へ向かう。
すると大滝が見えてくる。ポンプアップしているが、流量の調整機能が故障しており、流量が多く、滝の音が大きすぎることを館主が気にしていた。言われるまで気にならなかったが、一日中庭園と向き合っていると、そのように感じのであろう。
滝水が水落石を伝わず、滝壺に置かれた水受石に落ちる「離れ落ち」の形式になっている。滝石組の中心となる水落石は三段になっており、滝石組は新潟県内で産出された高級石材を利用している。なお、滝水が白糸になるように手持ちでスローシャッター撮影。(シャッター速度 1/10秒)
池泉東部には亀島があることを藤井さんに教わった。左側が亀の頭となる亀頭石で、亀脚石も判別できる。ただし反対側から眺めると亀のようには見えない。また亀頭石には「活養園」「御なりばし」と刻まれた橋杭型灯籠がある。そう、本庭園は「活養園」と呼ばれ、また亀島の奥にある石橋は「御成橋」と呼ぶ。
庭園と邸宅が一体につくることを「庭屋一如(ていおくいちにょ)」と呼ぶ。豪農が多い新潟県では、庭屋一如のもと造られた邸宅庭園が点在するのが特徴である。
館主に教えてもらった東の間近くから撮影。
佐渡の赤石を使った手水鉢。下に置かれた赤石に、水を掛けるとより鮮やかな赤色になるのが面白い。新潟では佐渡の赤石が時折みられる。
こちらのスペースではお抹茶や珈琲などをいただける。ゆっくりとした時間を過ごしたくなる邸宅庭園だった。
旧齋藤家別邸 案内図(パンフレットより引用) [ 案内図を拡大する ]
○ | 中島の石組が豪壮で見応えある。また額縁庭園としても美しく、時間があれば抹茶や珈琲を楽しみたい。 |
× | 中島周辺の植栽で、やや石組や流れが見えにくくなっている。 |