種まき権兵衛の里はふるさと創生事業により平成6年(1994)に完成した築山林泉回遊式庭園である。こちらは中根金作の庭園哲学を受け継ぐ中根庭園研究所の中根史郎によって作庭された。種まき権兵衛とは、「権兵衛が種まきゃカラスがほぜくる(ほじくる)」の俗謡で知られる権兵衛にちなんだ庭園で、民俗資料を展示した「権兵衛屋敷」も併設されている。
標高 約600mの便石山(びんしやま)を借景にした雄大な種まき権兵衛の里は、三重県最南端にある日本庭園となっている。
借景の美しい日本庭園はいくつもあるが、3方向をこれほど雄大な山並みで囲まれている庭園は日本でも数少ない。公式サイトには「築山林泉回遊式庭園」として紹介されていたが、「池泉回遊式庭園」との違いを調べてみると、「池泉回遊式」が「池を中心とした回遊型」という大きな枠組みで、「築山林泉回遊式」はその中で「山や林の要素を強く取り入れたもの」というものである。つまり、池泉回遊式の一様式として築山林泉回遊式があるということだ。
豊かな曲線をもつ汀に、大小様々な石を護岸石組として並べ、各所に出島を設けている。
まるで亀出島のような護岸石組。
中島には平橋と反橋が渡され、中島は巨石を用いた立派なもの。また、中島のそばには池中立石を据えているところに美的センスを窺える。
美しき紅葉。
庭園北部には枯流れのようにみえるが、中根庭園研究所の公式サイトで完成当初の写真をみると、かつては水が流れていた。おそらくポンプによる循環であり、設備の故障やメンテナンスの関係で枯流れとなったのだろう。
苔付いた様子から、枯流れとなってから数年の歳月が経っているように思われる。
滝石組は当時の面影がないほどに荒れており残念である。せめて、草を除去すると、枯滝石組として再生できるが、敷地が広大なだけに、無料施設としてのメンテナンスに限界があるのだろう。
こちらにも滝石組があるが、かなりうっそうとしていた。
滝石組周辺は整備されていなかったが、大半のエリアはこのように美しい姿が保たれており、広大な築山林泉回遊式庭園としては、十分に魅力的な庭園であった。
| ○ | 雄大な山々に囲まれた借景が見事であり、日本有数の築山林泉回遊式庭園である。 |
| × | 滝石組周辺が整備されていなかったのが残念である。 |