陽願寺は浄土真宗本願寺の蓮如上人(れんにょしょうにん)の勅願により、室町時代(1484)に善鎮(ぜんちん)によって開基。江戸末期(1856年頃)に建徳された御殿は国登録有形文化財であり、その南庭は「御殿庭園」と呼ばれる同時期に作庭。また竹の間「控えの間」には坪庭など、いくつもの庭園が造られている。
武生駅から徒歩圏にある陽願寺には、池泉庭園と枯山水を楽しめる庭園がある。江戸末期に建築された御殿と、その南庭となる御殿庭園は本願寺13代当主・藤枝澤揚好みによるものだ。
御殿はL字型の広縁をもち二方向から庭園を鑑賞できるようになっている。ちなみに通常期はお抹茶と御菓子の有料サービスがあるが、取材時は紅葉シーズンの特別イベントとして祇園辻利のパフェなども販売されていた。
御殿庭園は敷地内には立ち入れないが、中央部を掘り下げ御殿から庭園全体を見渡せるように設計されている。手前にはサツキなど低木、奥には樹齢400年を越える大木が並べることで奥行きを生み出している。
池泉の周りを撮影してみる。池泉の左奥には滝石組もみられる。
望遠レンズで滝石組を撮影すると、石積み工法による滝石組であることが分かり、水流が流されると岩肌から離れて水が流れ落ちる「離れ落ち」形式である。
広縁から庭園を撮影。
御殿正面とは90度異なる場所から撮影。左手前の立石は本庭園の主石のような存在に感じた。
数寄屋風の「控えの間」には坪庭を設けている。
坪庭の東側には、市松模様の坪庭もある。京都・東福寺 本坊庭園の北庭と同じような意匠である。
市松模様に苔と敷石が配置されている。
本堂側から撮影。取材時はこちらで抹茶パフェなどを自由にいただけるスペースとして開放されていた。
対面所に面したところには、 巨石による沓脱石からS字を描く飛石が打たれた枯山水がある。
昭和9年に建築された洋館であり、数寄屋造りの御殿と洋館が繋がっているというのも珍しい。屋敷では時折みられるが、寺院では私の知る限りこちらだけだ。
最後に「控えの間」の坪庭を撮影。手水鉢は小堀遠州によって創案された布泉形手水鉢に類似した意匠のようにみえる。
○ | 屋外を廻遊できなく、市松模様の苔庭や苔の美しい坪庭があるため、雨天時にこそ訪問したい庭園。様々なタイプの庭園を屋内から見学でき額縁庭園の撮影も楽しい。 |
× | 特に見当たらない。 |