安楽寺は天台寺院であったが、室町時代に臨済宗東福寺派に改宗。この地方では最も古い禅寺のひとつである。書院北庭には重森三玲と同時期に発掘調査という手法で日本庭園を研究していた森蘊(おさむ)によって、昭和56年(1981)に作庭された枯山水、および境内敷地は平成27年(2015)に住職が設計し、西本みどり園によって施工した枯山水が見られる。
桂離宮や修学院離宮の発掘調査や復元整備を行い、庭園文化研究所を設立した森蘊(おさむ)によって作庭された枯山水が見られる安楽寺。観光客が訪問しないエリアということもあり、著名な方が手掛けた庭園ながらも、本庭園を紹介している記事は極めて少ない。観光寺院ではなく、お寺の方が不在の場合は見学ができないため電話による事前予約が望ましく、私も予約して訪問することに。
山畔を活かして枯滝石組を造り主景として、滝と渓流を取り入れた枯山水となっている。
焦点距離95mm(フルサイズ)で滝頂部を撮影。頂部には遠山石を思わせる石を据え、三尊石のように組んでいる。
枯滝石組から流れ落ちる水飛沫を無数の砕石(さいせき)で表現している。
パンフレットには渓流には臥岩(ふせいわ)、竪岩(たていわ)、島という記述があるが、どの石を表しているか明確には分からなかった。
渓谷は迫力があり、また斜面の刈り込みも独特で雲を表現しているようにもみえる。
解説によると、人里離れた奥深い山を意味する深山幽谷(しんざんゆうこく)を表現した枯山水とのこと。
また本庭園は杉苔の状態が極めて良い。2023年は猛暑であり各地の苔は焼けてしまっていることが多いが、安楽寺の苔は活き活きしている。お寺の方に伺うと、雨の日に水が湧くこともあり、沢ガニも見られるとのこと。山からの湧き水が豊富な土地なのだろう。
苔庭には品の良い三尊石がみられる。
書院からの額縁庭園。
続いて本堂南側に設けられた枯山水を見学。こちらは現住職が作庭して、広島県安芸高田市の西本みどり園によって施工したものだ。鐘楼は昭和50年に建築されている。
枯滝石組と枯流れという基本構成は書院北庭と同等である。
枯滝石組は中央の石を敢えて低く据えているが印象的だった。
○ | 檜林と良質な苔庭に囲まれたなかで力強い枯滝石組と渓谷を設けることで、静寂さのなかに躍動感がある。 |
× | 特に見当たらない。 |