長泉寺は江戸初期に現在地へ移り、1787年に高野山真言宗に属するようになった。本堂西側の庭園は寺伝によれば江戸初期とのこと。昭和60年に県文化財名勝に登録される。
淡路島には江戸時代に作庭された古庭園が複数残されており、淡路サンセットラインルート近くにあるのが長泉寺庭園である。山門を入って左手に池泉観賞式庭園があり、終日自由に見学できる。
まずは「ひょうごの庭(著:西 桂)」を参考にして池泉観賞式庭園を図解していくと、蘇鉄(ソテツ)あたりに滝石組を設けている。刈り込みに挟まれたところになぜか滝添石があり、本庭園の守護石も兼ねている。左手の石橋付近には池中に岩島が三尊石風に組んでいる。
お寺の案内板には「築山の裾にある枯滝の石組は、主石を中心に伝統的な風趣を示している」と説明されている。主石とは写真左の滝添石で、本庭の守護石を兼ねているが、解説があっても滝石組と滝添石の位置関係が釈然としない。滝添石、および蘇鉄の根元にある滝石周辺の刈り込みを除去すると枯滝石組がよく分かるのだろうか。
滝添石はやや傾斜をつけて建てられ、護岸の亀甲用の平石との対比が美しい。この角度からみると滝添石と刈り込みで鶴にもみえてくる。写真左手は、池中に岩島が三尊石風に組まれたものであるが、このような池のなかにある立石を池中立石(ちちゅうりっせき)とも呼ぶ。
大・中・小の3つの池中立石が勇ましく並び、景観を引き締めている。三石による池中立石としては、新潟県新発田市の清水園でも見られる。
築山には蘇鉄の群生。日本庭園では、永続性を示す縁起の良い奇数が使われることが多く、七五三石組は各地でみられる。同様に蘇鉄も「七・五・三」と分けて植えることで寺の繁栄を願う。
自然石を二枚連ねた石橋。石橋に向かって2段ほど下る石段を設けた意匠はあまりみないものだ。また石橋にある巨石は出島を使った亀島のようにもみえてくる。
二橋式の南側には一枚板の石橋。
先ほどの石橋を反対方向から撮影。
本堂と築山の挟まれた空間に南北に穿った池泉を設けた池泉観賞式庭園である。
○ | 大・中・小の3つの池中立石が景観を引き締めており美しい。 |
× | 枯滝石組の石が刈り込みにより見えにくく、また池泉にある円形の鉢がないほうが良い。 |