長野県最大規模のアジサイが咲き誇ることで知られる深妙寺は、平安時代に創建されたと伝わる。鎌倉時代に真言宗から日蓮宗に変わり、安土桃山末期(1600)に現在地に移る。住職に確認したところ池泉庭園は江戸時代に作庭され、昭和に改修しているとのこと。
長野県では「あじさい寺」として名高い平安時代に創建された古刹。紅葉も終盤戦になったタイミングでの訪問ということもあり、誰もいない静寂な環境での見学。
築山に沿って池泉を造り築山をぐるりと回遊できるようになっているが、基本的には正面から眺めることを前提とした池泉観賞式庭園だろう。
築山には滝石組を造り、池泉には中島を設けている。滝石組には刈り込みなどの植栽があるため、滝石組の力強さを失いかけている。滝石組の植栽は取り除いたほうが本来の美しさを見ることができると感じた。
滝石組を撮影。奥には木曽山脈が借景となっている。青石の立石で組まれ頂部は三尊石風に組まれ、中央の立石は遠山を抽象的に表現した遠山石(えんざんせき)だろうか。また滝水が落ちる面の石となる水落石(みずおちいし)に向かって5つの石が連なっている。水落石に近い石は、鯉の滝登りに見立てた鯉魚石(りぎょせき)に似た造形だ。とすると、その手前の4つの石も滝に向かっていく鯉魚石と推測もできる。これまで鯉魚石は滝石組に1つだけだと考えていたが、長野県木曽町の興禅寺では100近い鯉魚石があるため、この推測も遠からずというものか。鯉魚石については、長野県駒ヶ根市の光前寺庭園の龍門瀑と呼ばれる滝石組の記事を参考にしてほしい。
池泉には南側に石橋を渡している。
出島風の護岸石組から2石の自然石を組み合わせた石橋は、品格を感じさせる。
池泉北部には沢飛石を設けている。
本堂と会館を結ぶ渡り廊下の奥に池泉観賞式庭園がある。ぜひアジサイの時期にも訪れてみたい。書院を挟んで池泉庭園の反対側に枯山水と記載されてたが、見るべきところが少なかったため割愛。
○ | 滝に向かう複数の鯉に見立てたと推測される鯉魚石が興味深い。アジサイ時期に訪れると、日本庭園とアジサイを同時に愉しめるのも嬉しい。 |
× | 滝石組周辺の植栽により、滝石組本来の力強さが失われている。 |