江戸中期(1675年)創業の湯田温泉老舗旅館。平成29年に登録記念物(文化財)に松田屋の庭園は、江戸中期に造られ当時は枯山水であった。その後、大正初期(1918)に第9代総理大臣を務めた山縣有朋(やまがた ありとも)に支援を元に、植木職人7代目・小川治兵衛により作庭。山縣は築庭が趣味であり、京都の近代庭園として有名な無鄰庵(むりんあん)は、山縣が施主となり日本を代表する庭園デザイナー小川治兵衛にて作庭。小川治兵衛の新しい造園手法を引き出したのは山縣とも言われ、政治家にして明治中期以降の庭園様式の形成に多大な影響を及ぼしたとされる。
小川治兵衛により作庭された庭園を宿泊客でなくても見学できる松田屋。受付に一声掛けて庭園に向かう。当日は小雨降る天気であったが、基本的に下方向を撮影する庭園なので、なんとか撮影できる。
小川治兵衛といえば、庭園に芝生を初めて用いた人物といわれている。芝生と白色と中心とした大振りの砂利により庭園中央部に美しい光景を演出している。その境目には巨石を添えることでアクセントとなり、単調な景とならないよう工夫されている。
庭園東部には大滝が組まれている。大滝から落とされる水は、庭園内を流れる川の源流となっており、庭園は流れを中心とした流水回遊式庭園になっている。この流れに沿って散策すると、景の変化が楽しめるとのこと。また、滝付近は渓谷を見立てるような意匠と考えられる。
大滝を注意深くみてみると鯉魚石(りぎょせき)のような石を確認できる。写真に赤い▲をマーキング。鯉魚石:中国の鯉が滝を登ると龍になるという故事「登竜門」にちなんだ鯉を石に見立てたもの。
本庭園は、苑路で滝上に登れるため上から見下ろしてみる。赤い▲マークが鯉魚石と思われる石だがどうだろうか、このような推測も庭園の愉しみ方のひとつである。
ちなみに大滝の源泉は、なんと地下水である。触ってみるとぬるく、温泉が滝に流れ込んでいるきわめて珍しい庭園であることが判明。さすが湯田温泉にある庭園だけある。
庭園内には足湯もあったが、宿泊者ではないので利用は控えることに。
足湯近くにある小滝付近から庭園を眺める。池泉庭園を囲む護岸石は大振りで、力強さを感じる名石ばかりだ。庭園の格を感じされる1枚である。
庭園に面した客間がみえる。広縁が設けられ、2方向に庭園が広がる松田屋ホテルでネット予約できる最上級のお部屋だろう。2名1室2食付きで、1名4万円~というプライスである。なかなか。。。ちなみに、このお部屋の真上に、電話予約しかできない最上級の部屋「春畝」もあるが、こちらは宿泊料金不明だ。
美しいオシドリが庭園に住みついている。かわいらしい。
松田屋ホテル庭園の案内図。パンフレットより引用。 [ 案内図を拡大する ]
○ | 力強い護岸石に囲まれた庭園中央部の芝生と砂利のデザインが素晴らしい。また滝に温泉が流れているのも珍しい。 |
× | あっという間に散策できてしまう。この広さであれば、もう少し苑路が欲しいところだ。 |