臨済宗東福寺派の大本山・東福寺の塔頭寺院で第一位に置かれている龍吟庵。室町時代(1291年)に創建され、昭和39年(1964)に、モダンな庭園造りで知られる重森三玲(しげもりみれい)にて、3つの枯山水が造られた。
期間限定で特別公開される「龍吟庵」には3つの庭園がある。こちらは西庭「龍門の庭」であり、重森三玲らしいモダンな庭園だ。紅葉時期はモミジで有名な東福寺の通天橋には、溢れんばかりの観光客で賑わうが、こちらは比較的ゆったりした時間が流れている穴場である。
18mmの超広角レンズでも「龍門の庭」を1枚に納めることができず、2枚の写真をパノラマ合成。すると分かるだろうが、「龍門の庭」と名付けられた意味が・・・
景の中心となる石組は龍の頭と角(ツノ)であり、そこから渦を巻くように龍を表現。白砂は雲を表現し、龍が海中から黒雲に乗って昇天する姿が石組みで見立てられている。
青石により龍の頭と角(ツノ)を表現。
反対方向から眺める。眺めれば眺めるほど龍に見えてくる。さすがは重森三玲の作品である。
庭園の奥には竹垣があり稲妻を表現している。
「龍門の庭」と似た意匠の庭園が一乗寺の圓光寺(円光寺)に造られている。「奔龍庭(ほんりゅうてい)」と呼ばれ、龍・雲・稲妻と要素が一緒である。平成に造られた庭園で、「龍門の庭」を強く意識した庭園であることは確かである。
東庭「不離の庭」。なんとも珍しい赤砂が敷かれた枯山水。中央に長石を臥せ、その両側に4石が円を描くように配置されている。
4石には傾斜が設けられ、反時計回りに隣の石を追いかけているようにもみえる。漢陽寺(山口県周南市)の「地蔵遊化の庭」と似た意匠である。漢陽寺の庭園は、龍吟庵の作庭5年後、三玲によって手掛けている。
本堂越しに「不離の庭」の額縁庭園を撮影。
南庭「無の庭」は、禅寺らしく白砂だけのシンプルな庭園である。
最後に「龍門の庭」をもう一度観賞。ずっと佇んでいたくなる庭園である。
龍吟庵に繋がる参道を眺めながら、龍吟庵をあとにする。通年公開ではないが、特別公開時期に京都を訪れたら、立ち寄って欲しい。庭園マニアでなくとも、重森三玲の魅力がダイレクトに伝わると思う。
○ | 龍を見立てた石組や、赤砂の枯山水など重森三玲晩年の「永遠のモダン」を間近で楽しめる。 |
× | 特に見あたらない。 |