西禅院庭園

重森三玲によって作庭された3つの庭園がある西禅院。本寺院は宿坊であるが、今回特別に庭園見学させていただいた。まずは昭和26年に作庭された庭園から紹介。既存の池庭を改修したもので、様々な角度から池泉庭園を眺められるように打った飛石があり、軒下の延段は桂離宮の延段の影響があるとされている。

山畔には三尊石、池泉には岩島、そして北側には滝石組を設けている。護岸石組はやや小振りであるが、二重三重に組まれた重森三玲らしい密度の高い石組となっている。

山畔を活かした滝石組は、立石を中心とした力強い構成で、滝下には鯉魚石がある。鯉魚石が分かりにくいので、近づいて撮影すると、

こちらが鯉魚石になっている。滝下に舟石のようになっている鯉魚石は、山口市にある常栄寺 雪舟庭に類似している。なお、鯉魚石を備えた滝石組は龍門瀑（りゅうもんばく）と呼ばれ、鯉が滝登りに挑戦し、登りきった鯉だけが竜になるという伝説がモチーフ。もちろん鯉が滝を登るようなことはできないが、ひたすら修行を繰り返すという禅の理念を石組で表したのである。

元々あった池を活かした庭園であるが、池泉の形状も豊かである。

続いて、先ほどと同時期に作庭された2つめの庭園。縁側と山裾の間の岩盤を背景として枯流れの枯山水となっている。岩盤は正智院にある明神岩の一部である磐座（いわくら）である。磐座とは、神が宿り信仰対象となった石のことであり、代表例としては倉敷市の阿智神社で見られる。

目を惹くのが、角張った石が傾斜した美しい三尊石。特に中央と右手の薄い青石が見事である。

南部には枯滝石組と、自然石による石橋。また、石橋の先には軒下に延段が設けられている。

延段は大小の青石をとりあわせたものであり、解説によれば重森三玲の最初の試みとのこと。

3つめは昭和28年に作庭された露地であり、写真右手の内廊下から見れば枯山水になっている創作庭園でもある。

腰掛待合から、山畔にある蓬莱連山に向かって一列に石が並んでいる。石柱群が圧迫感を与えないのは、手前に適度な空間があるためだろう。

青石による蓬莱連山。また4群ある石組が、苔島によって独立している。重森三玲は、この庭を雲海に浮かぶ高野の峰々を抽象表現しており、苔島が雲海で、立石が高野の峰々なのだろう。

茶室から飛石を渡ると手水鉢があり、その奥には滝淵水のように立石がある。なお手水鉢は鎌倉時代の石像品とのこと。

茶室はパナソニック創業者である松下幸之助が長期滞在した部屋であり、この部屋にも宿泊できるとのこと。