神勝寺は昭和40年(1965)創建の臨済宗建仁寺派の特例地寺院。広大な敷地を活かして平成28年(2016)にゆっくり禅を楽しむ体験場所として「禅と庭のミュージアム」をオープン。庭園は「賞心庭」、「無明院」、「洸庭」と大きく3つに分かれる。無明院は昭和52年(1977)に建立された本堂となる。
神勝寺の本堂となる無明院には、足立美術館(島根県安来市)の庭園を作庭したことで知られる作庭家・中根金作(なかね きんさく)による3つの枯山水と露地がある。
本堂からみて右庭が「無明の庭」。主体となる7石は3・3・1で組んでいる。説明によると無明という迷いや煩悩から離れるため、衆生(しゅじょう)が懸命に修行している姿を表した庭とのこと。衆生:生命あるものすべて
「無明の庭」の右側には、枯山水に時折みられる盛砂。これは厄除けや場の浄化としの風習である「盛り塩」と同じ意味を表す。
本堂からみて左庭には「阿弥陀三尊の庭」がある。
サツキの刈込みと石で3つの島を構成している。中央の島にあるひときわ大きな立石が中尊石だろうか。
更に左手には「羅漢の庭」がある。修行する者が理想とする羅漢が懸命に修行する様子であり、石と刈込みが曲線を描くように連なっている。
その奥には蓬莱庭園らしき造りになっている。左手が亀島で、右手が鶴島となり、奥の築山が蓬莱山となるのだろう。
亀島を別角度から眺める。奥の鶴島には、松ではなくモミジが植樹されている。
枯滝石組。滝上部の中央には蓬莱石とも考えられる立石を据えている。
先ほど「石と刈込みが曲線を描くように連なっている。」と表現した石組を横から眺める。三本の松とのバランスが絶妙だ。
数寄屋造りの茶室「玄庵」では、床モミジならぬテーブルモミジが楽しめる。それを撮影したものが、、、
こちらである。京都などでは、このような撮影スポットはごった返すが、こちらでは日曜日にもかかわらず撮影中だれもやってこなかった。
茶室「玄庵」には、枯山水と同じく中根金作による露地が作られている。露地には、数ある灯籠のなかでも最も美しいと感じる「織部灯籠」がある。基礎がなく竿を直接地中に埋め込み、竿の上部にアルファベットのFのような文字が刻まれている。また「織部灯籠」では、竿下部にキリスト像が彫り込まれていることが多い。これは江戸時代初期にキリスト教禁止令のなか、密かに信仰を続けていた隠れキリシタンの信仰物といられる切支丹灯籠(きりしたんとうろう)と呼ぶ。切支丹灯籠の他例としては、山水園(山口市)などがある。
神勝寺 禅と庭のミュージアム 案内図。赤枠が本記事での紹介エリア。 [ 案内図を拡大する ]
○ | 中根金作の庭園が4つも同時に見られ、かつ上からの視点でも楽しめるのが面白い。 |
× | 露地の造形がやや単調である。 |