松任ふるさと館は明治から昭和にかけて金融などで財を成した吉田茂平の邸宅。紫雲園は旧・吉田茂平邸の邸宅庭園で、12年かけて大正(1923)に完成した池泉回遊式庭園である。昭和57年に一般公開され、平成13年(2001)に主屋、門及び両側物置が登録有形文化財に登録される。
JR「松任」駅から徒歩1分にある邸宅庭園「紫雲園」。駅近で広大な邸宅庭園が無料開放されているのは、ここだけではないだろうか。
平成2年に改修された広縁からの額縁庭園を撮影。正面の刈り込みの奥に池泉庭園があるため、広縁からは池泉が死角になるのは、桂離宮(京都)の「衝立の松(ついたてのまつ)」のように、見えそうで見えないことで苑路散策に期待感を持たせる演出だろうか。
園内は廻遊できるようになっており、池泉や中の島を構成する護岸石組は巨石を使っている。
中の島には切石橋を渡しており、巨石ながらも品のある良質な石を重ねている。
紫雲園は各地の名石を配置している。特に見どころは庭園名にもなっている「紫雲石」であり、豊臣秀吉の七名石のひとつである。江戸時代に加賀藩と加賀の豪商・木谷藤右衛門が紫雲石を入札で争い、落札できなかった藩主の家来が切腹したことから、「加賀藩士腹切りの石」と言われている。
京都で産出した貴船石。
敦賀石。岩の切れ目が重厚感を醸し出している。
公式サイトに「滝落ちの石組みの脇から石段を登ると、築山頂の日本三名石の貴船石が迎え」という記述から、こちらが枯滝石組であることが分かる。三段に落とされた滝石組であるが、灯籠の存在がもったいない。枯滝石組であることを認識せずに置いたのではないかと思われる。
苑路から池泉を望む。
中台にハート形の猪目が彫られた善導寺型灯籠。
鷺(サギ)が一本足で立っている姿を模して造られたといわれる濡鷺型石灯籠。
広縁越しの額縁庭園。
紫雲園の案内図 [ 案内図を拡大する ]
○ | 各地の名石が散りばめられており、庭石の案内図をスマホに撮影して、実物と見比べながら散策するのも楽しいだろう。 |
× | 枯滝石組に灯籠を置いているのが不自然で残念。 |