正法寺は鎌倉時代初期(1191)に創建した寺院で、室町時代に浄土宗に改宗され、本時代に後奈良天皇の勅願寺となる。庭園は2ヶ所あり、江戸中期に作庭されたと伝わる京都府指定名勝の池泉庭園と、重森三玲の弟子・吉田清史によって平成に作庭された枯山水があり、期間限定で公開される。勅願寺:天皇の命で皇室の安泰を祈願する寺のこと
桜の時期、紅葉時期など年間10日ほどしか公開されていない正法寺。右手に見える書院と山の間に池泉を設けた池泉観賞式庭園である。山畔には石灯籠があり、望遠レンズで撮影してみると、
マリア像が彫られた織部灯籠である。その奥には滝石組がみられる。
切り立った山畔を活かした滝石組は、何段にも落とされている。巨石は使っていないため、見落としてしまいがちな滝石組であるが、周辺の草木を綺麗に除去していることで石組が主体となり良い。
沓脱石から短冊状に渡した切石による沢飛石で対岸へ渡れるようになっている(見学時は庭園内への立ち入りは不可)。
書院と山畔の間に池泉を穿ち、池泉は小方丈まで続いている。護岸石組は大小組み合わせたもので力強い。
書院から額縁庭園を撮影。紅葉の終わりかけであり色づきが良くないが、最盛期であれば石組、池泉、紅葉の組み合わせが絶妙だったろう。
小方丈方面を撮影。山畔には多くの石を配している。
小方丈からは、迫りゆく力強い山畔石組が見事である。
小方丈から書院を撮影。小方丈と書院側では石組の強さが異なり、小方丈のほうが力強い。作庭家が違うのか、同一作庭家による意図的なものであるのかは分からない。
書院前には織部灯籠と手水鉢が置かれているが、どちらも注目すべき特徴がある。まず手水鉢は切り込みがみれる意匠だ。
そしてマリア像が彫られた織部灯籠(別名:キリシタン灯籠)の竿には空洞を設けた希有な意匠だ。
続いて大方丈、本堂、唐門に囲まれた空間には、重森三玲に従事した吉田清史による枯山水がある。
本尊を阿弥陀三尊とする正法寺にちなんだ「二十五菩薩来迎の庭」となっている。三尊石の背後に、サツキで三尊風の大刈り込みを行い、その手前には並のようなツツジの刈り込みがされている。ガイドの説明によれば、三角形の切石は三尊石からの光を模しているとのこと。
三尊石、三尊風の刈り込み、三角の切石を本堂前から撮影。
○ | 山畔地形を活かした滝石組、山畔石組など迫りゆく石組が美しい。また本堂前に近代に作庭された枯山水も観賞できて充実度が高い寺院庭園である。 |
× | ガイドによる説明が非常に長く、自由観賞まで45分かかった。時間が限られている場合は、ガイド不要もしくはあらかじめ時間を伝えたほうが良いだろう。 |